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半崎美子、シングル「布石」インタビュー

半崎美子、シングル「布石」インタビュー

March 10, 2020 12:00

半崎美子

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ー この曲は亀田誠治さんがプロデュース。ラスサビは特にドラマチックでありながら、半崎さんの歌声と美しいメロディを活かした王道的なサウンドで重くなりすぎない、まさに亀田さんらしいプロデュースを感じました。

まさに亀田さんのアレンジパワーが「布石」には必要不可欠でした。ただ最初、イントロはこんなにキラキラしていて良いのかなと思ったんですが、亀田さんはこの曲の肯定感をさらに輝かせるようなアレンジをしてくれました。その他にもタメや畳み掛ける部分もデモのイメージをきっちり活かしてくれて。

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ー あのタメ良いですよね。私、あの部分が大好きなんです!

私もなんですよ! 勿論デモの段階で亀田さんには曲の想いなどお伝えしたんですが、 1サビのちょっとしたタメと2サビの大きいタメも、亀田さんは全部活かしてくれていて、私の曲への想いが伝わったんだと思いました。この曲に関しては、亀田さんにアレンジしてもらうことが先に決定していたので、もしかしたらイメージとして亀田さんのサウンドやアレンジに多少引っ張られながらメロディを書いた気がしていて、いつもとは少し違う流れになっているかもしれません。


ー カップリングの「朝凪」は、3月11日にこのシングルをリリースすることが決まって書いた曲だそうですね。

そうなんです。歌詞について細かく説明する曲ではないと思っていますが、上京して20年、自分なりに物の見方が変わっていき、今の自分でなければ作れない曲だと思っています。すごく静かに漂う感情を祈りを込めて書きました。


ー 2013年に、やはり東日本大震災の被災地へ向けて書かれた「希望の桜」ではもう少し言葉のチョイスがダイレクトというか。

そうですね。今言ったことってまさにそこにあるんですよ。「希望の桜」を震災後に書いた時と、今の自分では随分変わっているんですよね。


ー 実際に被災された方からしても、多分あの時期は「希望の桜」のようにダイレクトな歌詞の方がリアルに感じたと思うんです。

そうそうそう。


ー それに対して「朝凪」は、時を経て、風化という意味ではなく、もっと心の奥底に沁み入る曲だと感じて、まさに祈りを感じました。

そう言ってもらえて本当に嬉しいです。当時は当時、今は今でしか書けない曲なんだと自分でも思っています。


ー 更に、東日本大震災からの復興プロジェクトである「桂島”うた”プロジェクト」から生まれた「わせねでや」のカヴァーも収録。カヴァーを収録するのは初ですよね。

そうなんです。作品にカヴァーを入れるならこういう曲にしたいと思ったんです。昨年の3月9日、宮城での「つながる心 つながる力 みんなでつくる復興コンサート」(以下:復興コンサート)に出演させて頂いた時に、初めて出会って。この曲は内海和江さんという方が避難所で書いた一篇の詩から生まれたんですが、その時は仙台南高等学校音楽部合唱団の皆さんと、仙台フィルハーモニー管弦楽団の演奏で歌いました。この「わせねでや」は、“忘れないで”を意味する方言なんですが、生活に根付いた音楽であり、その土地で暮らしている人でなければ作れない曲……まさに歌の源流に触れた気がして、私もこの曲を伝えていきたいと考えたんです。


ー 内海和江さんとはお会いされたんですか?

(取材時)まだなんですよ。今度宮城に行くのでその時にお会いできれば嬉しいですね。作曲を手がけられたヒザシさんは昨年の復興コンサートを観られていて、「わせねでや」を歌う前に、私がこの曲で初めて感じた想いを伝えたところ「この歌をああいう風に感じとってくれ、言葉にしてくれたことに感激しました。まさにこの歌が伝えたいものをすべて話してくれました。」とおっしゃってくださり、それがすごく印象的でした。


ー 半崎さんの作品でのカヴァーが珍しいというだけでなく、そこにある物語や意味を強く感じました。

やはり自分が伝えていくにあたって、本当に心が震えた体験は大切だろうし、誰しもが心にある故郷と重なる部分があると思うんです。この曲が大切に歌い継がれていく世の中であって欲しいと願っています。


ー 昨年の復興コンサートのお話も出ましたが、「サクラ~卒業できなかった君へ~」の合唱Ver.を歌われているのは仙台南高等学校音楽部合唱団。今までにない程に強く祈りが宿っていると感じたそうですね。

今まで、コンサートホール、ショッピングモール、被災地、学校、施設、病院など様々な場所でこの曲を歌ってきましたし、<祈り>というのは毎回感じることではあるんですが、この時は仙台フィルハーモニー管弦楽団の皆さんも泣きながら演奏されていて、仙台南高等学校音楽部合唱団の皆さんやお客様、ステージ横でカメラを撮っていたスタッフなどみんなが泣いていて……。その様子は歌っていても見えるんですよ。実際、仙台南高等学校の生徒さんからは同級生が津波で亡くなった話も聞いていたので、あの空間でこの曲を奏でた時に、まさにタイトルの「つながる心 つながる力」そのものだと感じました。あれほどみんなの想いが空に届いているなと、感じたことはなかったですね。だからこそ仙台南高等学校音楽部合唱団の声でこの曲を形にしたいと思ったんです。このシングルを3月11日に発売するにあたり、何か導かれるように録音しに行きました。


ー レコーディングで彼らの歌声を聞いて、改めて思うこともあったのではないですか?

ほとんど泣きっぱなしでしたね。子どもたちは様々な経験をしてきた切実さもあり、たくましさもあり。レコーディング後に合唱団の子から「この歌を歌っている時に、歌詞に出てくる“あなた”は、半崎さんにとっての “あなた” でもあると同時に、私たちにとっての “あなた” なので、私は先生や同級生のことを思い出しました。きっと、この曲を聴いた様々な方たちの“あなた”があって、それがしっかりと届くよう、想いを込めて歌いました。」というメールを頂いたんです。本当にそれが歌声に出ていると思いました。


ー そう考えると、やはり今回のシングルは、半崎さんだけでなく沢山の人の想いの詰まったものになりましたね。

やはり3月11日という日に発売することもそうですし、私が上京したのも3月。そして上京20年。色々な意味合いが重なり合って今回の作品になっている気がします。


ー 6月から、全国6会場で【上京20年記念 半美子 集大成コンサートツアー2020】を開催。

ありがとうございます。デビューからまだ3年ですが、残りの17年がこれまでの自分の活動土台を作っているので、その20年の布石が散りばめられたコンサートになると思います。インディーズの頃からひとつのテーマを決めて大切に開催してきた一年に一度の集大成コンサートが、今回この規模で6会場というのは私自身初めてですし、スペシャルにしたいですね!


ー ありがとうございました。


インタビュー・撮影 / 秋山雅美(@ps_masayan


■ 半崎美子 オフィシャルHP
https://hanzakiyoshiko.com/

Information

Release

半崎美子
「布石」

2020年3月11日発売

-収録曲-

1. 布石
2. 朝凪
3. わせねでや
4. サクラ〜卒業できなかった君へ〜 合唱 ver.(歌唱:仙台南高等学校音楽部合唱団)

布石

CD

CRCP-10442 / ¥1,091+税

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