半崎美子、シングル「布石」インタビュー
March 10, 2020 12:00
半崎美子
ショッピングモールでのライヴでは常にお客さんへ寄り添い、共に涙を流す半崎美子。出会った人たちはその優しさと包容力のある歌声に癒やされる。そんな関係を続けてきた半崎美子が故郷北海道から上京して20年の今年、シングル『布石』をリリース。タイトル曲では亀田誠治氏をプロデューサーに迎え、「サクラ~卒業できなかった君へ~」以来、二度目のタッグを組んだ。その他、3月11日にこのシングルをリリースすることが決まってから書いた「朝凪」、初のカヴァー曲「わせねでや」、仙台南高等学校音楽部合唱団による「サクラ~卒業できなかった君へ~」を収録。半崎の20年とニューシングルへの想いを語って頂いた。
ー 昨年の【「うた弁2」発売記念コンサートツアー2019「銀河鉄道39 ~きらり途中下車の旅~」】ではありがとうございました。
こちらこそありがとうございました!いかがでしょうか?
ー 会場が半崎さんの歌声に包まれて、感動しました。
あぁ、嬉しいです。
ー その映像作品が3月11日にシングル『布石』と同日リリースされるんですよね。
そうなんです。今までの出会いと想いが詰まったコンサートになったと思います。出会ってきた沢山の方たちとの対話から生まれた曲が多いので、曲それぞれに意味や物語があって。そういう曲たちを旅するだけではなく、今ここにいない人に会いにいく旅でもあった。そんな気がします。だからあのコンサートでは、もうここにはいない方たちとも繋がっている感覚にもなれました。全編通して物語のような構成になっているので、最初から観て頂くと、何故こういうテーマになったのかしっかり伝わると思いますので、映像を通して一緒に旅をして欲しいと思います。
ー『布石』同様、リリースが楽しみです。
その『布石』なんですが、(ジャケットデザインを机に並べながら)まだ色校段階なんですが…。
ー ああ、こういう感じなんですね!表ジャケだけを見た時は、”これ、布石じゃなくて漬物石だから!”って思わず一人でツッコんじゃいましたよ(笑)。
ほら、人の人生も漬物みたいにじっくり年月を経て味が出てくるでしょ。
ー なるほど!このジャケットに納得しました。それにしても中ジャケの写真…美味しそうです(笑)。
これ、うちの母が北海道から出てきて作ってくれたものなんです。私のいつもの朝食。
ー ええ!最高の朝食じゃないですか。
こういう食事が一番落ち着きますね。
ー そう思います。では改めて、上京して20年!おめでとうございます。
ありがとうございます。
ー ただ、活動やデビューの20周年はよく聞きますが、上京20周年って…(笑)。
あまり聞きませんよね。私らしいというか(笑)。デビューで言うとまだ3年くらいなので年数としては短いんですけど、自分の活動としてはだいぶ経ちましたね。
ー 上京してからのターニングポイントは?
小さいことで言えば色々あるんですが、上京してパン屋さんで務めて、最初の12年くらいはクラブやライヴハウスで歌っていましたが、ショッピングモールで歌い始めたのがやはり大きなターニングポイントだったかもしれません。お客様と対話することで気持ちの面でも曲の面でも変わってきましたから。
ー 東京に対してのイメージは変わってきましたか?
変わってきましたね。とはいえ、自分の中で具体的なビジョンを描いて上京したわけではなく「住み込みで働ける場所が決まった。よし!」って突発的に出てきたみたいな感じだったので(笑)東京に対しては、ぼんやりイメージしている程度でしたが。
ー それじゃあ東京に対しての憧れがどうこうという話ではないですもんね(笑)。
そうなんです。そういう状態で出てきたので、当時はさほど信頼できる人がいたわけでもないし、勿論今みたいに歌を通して出会った人たちと対話が出来ている状態でもなかったですし。ですし。今考えると、必死すぎて周りが見えていなかったんだと思います。「私の歌を聴いてください!」って発信ばかりで。だから騙されたり辛いこともありましたし、自分の歌を受け入れてもらえない現実を見たというか……。でも当時私が住んでいたマンションの清掃をさせてもらうことで家賃を下げてもらっていたんです。そういう大家さんの優しさに触れることもありました。
ー そういう経験を経て、今回シングルのタイトル曲「布石」を書こうと思ったのは、やはり上京20年というひとつの節目が大きかったということでしょうか?
大きかったですね。上京して20年の中で感じてきたものや、自分自身の活動を振り返る気持ちも勿論ありますが、この20年って、出会ってくれた方たちとの20年でもあるんですよね。私はその出会いで救われました。そういう方たちとの出会いや対話から今回も曲が生まれました。だからこの曲は私自身のことでもあり、出会ってくれた方たち…例えば仕事や子育て、介護など、あらゆることにいえますが、迷ったり背負ったりしながら積み重ねてきた人たちへ向けた曲でもあるんです。
ー ひとつのことを大切にすればする程、報われないことや悔しさは増えるし、それをリアルな言葉で書けば恨み節になりかねないですが、「青空」や「月」や「雨」などで表現しているところに魅力を感じました。
ああ、なるほど!(紙資料を見ながら)この「しがない雨に笑われて」だって、実際は色々な人の言葉ですからね。いや、たしかにそう。ただ特別意識してそう書いたわけではなかったので、改めてそう言われてみると私自身、発見があります。
ー これは想像ですが、半崎さんの気遣いがそうさせた。そんな気がします。
ありがとうございます。この曲は過去を肯定しながら、今現在も肯定的に書いたんです。今まで積み重ねた日々というのは今日に至るまでの布石なんですよね。そして今現在は未来への布石でもあります。
ー 残念ながら願ったり努力すれば必ず夢は叶うものではないですが、それでも夢を諦めずにいられたのは、そういうファンの言葉があったからですか?
本当にその通りですね。自分自身の揺るぎない信念や想いだけでは到底ここまで辿り着けなかったし、自分が音楽を続けてきたことで出会えた方たちの言葉があってこそです。サイン会で涙ながらにご自身の想いや、今抱えている問題を吐露してくださる方のお話を聞きながら感じるのは、それでも続ける気持ちがそこにあるという強さ。何というか……尊いです。夢に限らず、あらゆることに言えると思うんですが、今ある苦しいことを投げ出さず、一途に続けていることのかけがえのなさを称えたいです。「あきらめて 手放して その中で唯一続けてきたものがある」と歌詞にもありますが、それもすべて肯定的な意味で書いています。
ー 様々な出会いを大切にする半崎さんだからこその歌詞だと思いました。
ありがとうございます。
ー 今、介護のお話もありましたが、半崎さんの上京当時の様子が描かれたこの曲のミュージックビデオ(以下:MV)では、介護する人や足の故障を抱えながら陸上を続ける人などの人生も同時に描かれていて、より沢山の人が共感する内容になっていると感じましたし、歌詞にのせたラストで、当時の半崎さん(武内おと)と半崎さん自身が向き合うシーンは本当に感動しました!
嬉しい!私もあのシーンで武内さんと対峙する時に、彼女は普通に歌っているんですが、私はもう涙が止まらなくて(笑)。本当に当時の自分に会っている気がして、泣けてしょうがなかったですね。
ー MVを撮影したビナウォークは半崎さんが上京してはじめて出演したショッピングモールということですが、公式サイトではエキストラ役を募集し、思い出のショッピングモールで多くのファンを前に「布石」を歌うってどういう気持ちなのかなと…。
そうそうそう!あの日は当時お世話になっていたスタッフさんもいたので、あらゆることが重なってぐちゃぐちゃな気持ちでした(笑)。だから久々に喉が詰まって歌えなくなりましたね。
ー 武内さんは「現場でも半崎さんは皆さんを常に気遣って声をかけたり笑顔だったのが印象深いです。」とMVのコメント欄に書かれていて。
え、YouTubeの?
ー そうそう。
(その場ですぐYoutubeを確認しながら)あ、本当だ!うわぁ、こういうことを書いてくださるのが嬉しいですね。武内さんや他の役者さんやお客さんに喋りかけたりはしましたが、そういう風に言ってもらえるのは嬉しいですね。でも当日はすごく良い空気感の中で撮影させて頂きましたので皆さんへ感謝しかないですし、今、何かに向かって懸命に頑張っている方たちにこの曲やMVが届くと良いなと思います。