DedachiKenta、1st Album『Rocket Science』インタビュー
November 8, 2019 20:00
Kenta Dedachi
筆者がDedachiKentaの歌声を生で聴いたのは昨年の【Augusta Camp 2018 -20th Anniversary-】。ネイティブな英詞を洋楽のテイストに乗せて歌う姿はニューカマーにして異彩を放っていた。18歳で渡米し、もうすぐ20歳を迎えるDedachiは昨年11月、オフィスオーガスタの新生レーベル“newborder recordings”より第一弾アーティストとして『This is how I feel / Memories』でサブスク先行配信デビュー。12月には両A面アナログ7inch EPとして同曲をリリース。洋邦の枠を超え、全国FM29局のパワープレイにも選出される。だがその勢いは今年になっても止まらない。YouTubeが注目するアーティスト10組‟Artists to Watch”にも選ばれ、4月にはタワーレコード限定CD『breakfast for dinner』をリリース。5月にリリースされたAmPmの作品にVocalとLyricで参加した「more feat. DedachiKenta & FUNTYME」も話題になるなど、まさに新しい風を感じさせるDedachiが、10月30日に待望の1st Album『Rocket Science』をリリース。今回は今作についてや、彼の大切にしている想いについて訊いてみた。
ー 昨年のニューカマーに続き、今年オープニングアクトとして出演したオーガスタキャンプはいかがでしたか?
めっちゃ楽しかったですね!僕のステージに参加してくれたWillieさん(Drs)と 磯貝一樹さん(Gt)とはジャムセッションしてるようで、すごく仲良くなりましたし充実したセッションになりました。
ー 14歳からYouTubeにカバー動画をアップ。クリスチャンソングや、エド・シーラン、コールドプレイなどをカバーしていたそうですがJ-POPは?
うちは家族全員音楽好がきなんですが、僕自身は基本的に洋楽しか聴いてこなかったので、J-POPって殆ど知らなくて。そんな中で知っていた数少ないJ-POPのアーティストが秦(基博)さんだったんです。その動画を観たオフィスオーガスタの秦さんのマネージャーさんが僕のライブに来てくれて。
ー ほぼJ-POPを聴かれてこなかったようですが、オフィスオーガスタさんからアプローチが来た時はどう思いましたか?
実は…秦さんのことは知っていましたが、“オーガスタ”と聞いてもすぐには結びつかなくて(笑)。でも、自分が唯一知っていた日本人アーティストのマネージメントカンパニーの人たちということがわかってびっくりしました。その後、一昨年だったかな。オフィスオーガスタの25周年記念ライヴに誘って頂いてそこで初めてオーガスタってこういう感じなんだって、初めて分かったんです。
ー そのライヴは私も伺っていました。
そうでしたか!アンコールで福耳が登場する時にはマイクがいっぱい出てきたじゃないですか。
ー ええ。
その時はまだ何も知らなかったから、“何でこんなにマイクが出てくるんだろう。クワイアが出てくるのかな?”って思っちゃって(笑)。
ー クワイアっていう発想がDedachiさんらしい(笑)。
でも、アーティストが全員出てきて歌っているのを観て、“この空気、すごく良いな”と思ったんです。あれは印象的だったな…。僕の中ではアーティスト同士のバトルみたいなものがあると思っていたんです。エージェンシーに所属するって、そういうことなんじゃないかって。でもオーガスタを観てから皆、仲良く出来るんだと思えました。アーティストのカラーはそれぞれ違うけど、互いを音楽で励ましたり高め合ったりできるところって素敵だなって思いました。
ー 17歳でソングライティングを始めたとのことですが、その頃からミュージシャンを目指していたんですか?
14歳からカバー動画を投稿し出した頃はただの趣味だったんです。でも世界中からフィードバックが届くようになって、だんだんミュージシャンとしてやっていいきたいという気持ちが芽生え始めました。
ー 1st Album『Rocket Science』が10月30日にリリースですが、ご自身にとってこの1st Albumはどういう作品になりましたか?
1年かけてつくったんですが、この1年はすごくRich(充実)で、色々なことをしてきました。学業とレコーディングと、かなりタイトなスケジュールで並行して進んだので、今になってやっとアルバムが出来たことを実感しています。デビューした時もアメリカに居たので実感がなくて。でも、この『Rocket Science』がリリースされることになって、今までやってきたことをリアルにじわじわ感じているところです。何と言って良いか分からないFeeling(感覚)ですけど、完成度の高いアルバムになったと思うので、すごく嬉しいです。KOSEN(Colorful Mannings)さんをはじめ、Kan Sanoさんや多くの素晴らしいアーティストの方々にサポート頂いて完成した一枚です。
ー “Rocket Science”って確か、<困難なこと、難しいこと>などの意味があるんですよね?
“Rocket Science”だけで言うとそうです。アメリカだとよく「困難なことじゃないよ。」という意味で、notを付けたりして会話の中でよく使う言葉なんです。
ー it's not rocket science?
そうです!「Alright」や「Life Line」など、希望を感じられるテーマの歌が多いので、聴いてくれる人にこのアルバムを通して希望を与えられたらなと思っています。<どんなことがあってもit's not rocket science。大丈夫だよ>そんな想いを込めてつくりました。
ー タイトルナンバーの「Rocket Science」はポエトリーリーディングであり、Dedachiさんが宅録したものだと伺いました。
そうです。この「Rocket Science」と「I'll be fine」は最後につくりました。「I'll be fine」はアコースティックな曲があると良いと思ってつくったんですが、アルバムの一番最初にどういうタイプの曲を入れたら良いか悩んでいる時期にふと思いついて、家の周りの風の音や電車の音、自分の弟の笑っている声やイスラエルを旅したときの海中の音、蛇口から滴る水の音などをiPhoneで録ったものが「Rocket Science」のバックトラックになっています。
ー iPhoneで録ったんですか!
そう。声もiPhoneです。それらをエディットして、すごくラフにつくったんですよ。でもそのラフな音の方が、レコーディング・スタジオで録る綺麗な音よりも近くに感じるというか。みんなが使うスマホのボイスメモのように聴こえるというのも新しいんじゃないかと思って。冒頭“Life is not easy”というセンテンスから始まるんですが、渡米を含め最近自分にとって嬉しいことが沢山あるのに、時々それを当たり前のように思ってしまうことがあるんです。こうやってオーガスタで皆さんと一緒に活動出来ることだって決して当たり前ではないのに…。そういう時、自分はいつも謙虚でいることを忘れずにいたいと思って、簡単だったり当たり前に感じる時もあるけど、決してそうではないという意味を、その “Life is not easy”に込めました。
ー 確かに幸せなことが日常になると、いつしか当たり前だと勘違いすることってありますね。
でもそれは決して当たり前ではないんですよね。そんな中で<Rocket Science>という言葉を使いたくて、そこから “Life is not easy”と同じ意味でもある、“sometimes it feels lile a rocket science”(時々ロケット科学のように難しく感じる)と続けました。 そして、“困難な時でも、あなたが今いるべき場所にいるんだってことを忘れないで”と繋げている歌詞は、自分自身が両親からもらった言葉なんですが。
ー ご両親の?
ええ。これからオーガスタと音楽を作っていくのに、アメリカに行くのは自分にとって良い選択なんだろうか、とすごく悩みました。そんな時両親は「とても色々なことが起きているけど、今いるべきところに立っていて、これからどこに行こうが導かれた場所に立っているよ。」と励ましてくれたんです。それって希望じゃないですか。
ー ええ!
歌詞にある“nothing is impossible”も、ちょっとディズニーっぽい言い方なんですが(笑)。自分がやることすべてに100%の力を注ぎ、信じて進めば何でも出来ると、正に親からもらった言葉だったりします。
ー 素敵ですね。そういう言葉があるこの曲を1曲目にすることで、このアルバムの在り方が見えてくる感じがしました。
実際このアルバムに入っているほかの曲もこのテーマに近いものが多いです。
ー だからこそ、Dedachiさん自身のパーソナルはどんな人なんだろうと気になりました。怠けてしまったり、怒りに身を任せてしまうことなんてあるのかって(笑)。
全然ありますよ。普通にlazy(怠惰)になるし(笑)。
ー 変な言い方だけどちょっと安心しました(笑)。
「もう無理かも…」って落ち込むこともあるんですが、いつもそういう時に両親が励ましてくれるんです。だから自分が励まされ愛されたように、このアルバムを通して、聴いてくれる皆さんを励ましていけたらと思っています。
ー 今はレコーディング・スタジオで録音することが多いと思いますが、それまでは自身でよく宅録を?
今もやっていますよ。大学の寮は二段ベッドの下の段がテーブルになっていて、そこを“Kenta Studio”と呼んでやっています。
ー ということは部屋は自分ひとりで使えるんですね。
いえ、ルームメイトがいます。
ー ルームメイトがいると作業しづらいのでは?
全然平気ですよ。静かにしてもらわなきゃいけないのは歌録りの時だけですが、「ちょっと歌うね。」「OK!」みたいな感じ(笑)。うちは家族が多いから、常に人がいる環境で音つくりをしてきたんです。だから人がいて気になることはないですね。
ー 初の音源でもあり今作にも収録されている「This is how I feel」がDedachiさん初めてのオリジナル曲だとか。
そうなんです。この「This is how I feel」はKOSENさんと出会う前に自分でつくった曲のひとつです。まさに“This is how I feel=これが僕の気持ち”をタイトルにした曲で17歳の夏頃につくったんですが、今聴いても変わらない気持ちがあります。例えば歌詞の、“I wanna be hot or cold not it between(自分に望むのは 熱いか冷たいかのどちらかだけ)”や、“I wanna say what I wanna say withhold nothing(抑える事なく言いたい事を言いたい)”。自分はいつも生ぬるいところに居たくないんです。冷めるなら冷めて、熱くなるなら熱くなりたい。それに、どんな人の前でも自分の気持ちを素直に言える人になりたいし。そういうテーマは今でもずっと持っています。
ー まだインタビューが始まって間もないですが、Dedachiさんのそういう部分を感じました。物怖じすることもなく、かと言って斜に構えることもなく、ナチュラルな雰囲気を感じます。
あ、本当ですか?すごくストレートな人間なんです、僕は(笑)。