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大橋ちっぽけ、メジャーデビュー・アルバム『ポピュラーの在り処』インタビュー

大橋ちっぽけ、メジャーデビュー・アルバム『ポピュラーの在り処』インタビュー

March 13, 2019 18:30

大橋ちっぽけ

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テレビ東京系『水曜夜のエンターテイメントバトル エンタX』内のオーディション企画で優勝。昨年オープニングアクトを務めた【J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE~YOUNG BLOOD~】では新人にして話題を呼ぶ歌声を披露した大橋ちっぽけ。人気アニメ・ゲーム「なむあみだ仏っ!-蓮台 UTENA-」のタイアップ曲「ルビー」を1月に配信リリース。繊細でありながら存在感を放つその歌声は、それだけで聴く人を魅了するが、3月13日(水)リリースのデビューアルバム『ポピュラーの在り処』では歌声のみならず、様々なバリエーションに富んだサウンドで私たちを驚かせてくれた。今回、メジャーデビュー・アルバムへの想いを色々と語ってもらった。


ー コラムインタビュー(http://popscene.jp/foundit/042093.html)では、ありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。


ー あの時、楽曲としては1月に配信された「ルビー」に関してお答えいただきましたが、この曲は人気アニメ・ゲーム「なむあみだ仏っ!-蓮台 UTENA-」のタイアップ曲ということもあり、色々な反応があったのでは?

ありました。前作『僕と青』とはガラッとイメージが変わった印象だったようで「新しいね」という言葉や反応を頂きました。実際、「ルビー」は特に変化したことを象徴できる一曲かなと思うので、こちらの想いがそのまま伝わって嬉しかったです。


ー 初の書き下ろしということで、一番苦労した点は?

今回頂いたテーマは<広い愛>でした。テーマを頂いて書くことは初めてでしたし、リスナーの方々に気に入ってもらう前に、まず「なむあみだ仏っ!-蓮台 UTENA-」の関係者の方々に気に入ってもらわないといけない。しかも女性がメインターゲットのゲームやアニメにはどういう曲が良いんだろうって結構考えすぎちゃって…。だから歌詞も提出ギリギリまで悩みましたが、結果的に新しさを感じさせる曲が出来たことは良かったと思います。


ー タイトルに関しては、あまり直接的な言葉を使いたくなかったので<仁愛>の意味を持つルビーをタイトルにした発想も面白かったです。

『僕と青』では「君と春」や「19」、「さよなら、ありがと」など、結構シンプルで直接的なタイトルが多かったので、そこからメジャーデビューをして一番最初に出す曲が「ルビー」というタイトルだと、どういう曲なんだろうって想像してもらえるんじゃないかなと思ったんです。


ー 少し遡りますが、そもそもメジャーデビューのきっかけは何でしょうか?

やはりテレビ東京系『水曜夜のエンターテイメントバトル エンタX』で優勝したことが大きかったと思います。それまでも事務所やレーベルの方から連絡を頂いてはいましたが、歩みとしてはゆっくりで。でも優勝してからはすごい速さで事務所やレーベルが決まって、その他の計画も進んでいきました。


ー メジャーデビューが決まったことで、家族や友人から反応はいかがでしたか?

地元の友達にはあまり言っていなかったので、メジャーデビューが決定した時は結構驚いていました(笑)。<メジャーデビュー>って、何というか…ゴージャスな響きじゃないですか(笑)。


ー 華やかな感じで。

ええ。勿論僕自身、メジャーデビュー出来たことは本当に嬉しいんですが、色々大変なこともある中で、ワードだけを見ると幸せな響きだし、Twitterで発表した時もすごく反響が大きかったので、それには僕自身もちょっと驚きました。あと家族には逐一報告していましたが、改めて「良かったね」と言ってもらえました。


ー 去年、両国国技館で開催された【J-WAVE TOKYO GUITAR JAMBOREE~YOUNG BLOOD~】ではオープニングアクトを務めましたが、様々なアーティストが出演し、1万1000人の前で演奏するのはどういう感覚でしたか?

ステージで歌ったあの時の感動はすごく覚えているんですが、それ以上に印象深かったのは楽屋です。僕はどちらかというとステージより楽屋の方がずっと緊張しっぱなしでした(笑)。


ー 楽屋?

楽屋は大部屋で、全アーティストが揃っていたんです。


ー そうなんですか!

ええ。だから森山直太朗さんやハナレグミさんをはじめ、出演者の方々が周りにいっぱいいて緊張しました。でも色々とお話しながらCDを渡してくれたりありがたいお言葉を頂いたりしました。そういうことがあってからの本番、ステージに立って歌った時に、勿論僕はまだ新人だけど……両国国技館にかけてるわけじゃないですが(笑)、まさに同じ土俵に立つひとりのアーティストなんだと自覚が芽生えました。その感動が一番大きかったですね。


ー デビューアルバム『ポピュラーの在り処』ですが、バリエーションに富んでいて新しいちっぽけさんの魅力を色々と感じられました。

ありがとうございます。前作『僕と青』は青をテーマに十代の憂いが前面に出た作品でしたが、今作はよりカラフルでバラエティに富みつつも、僕が大切にするメロディや自分が好きで聴いてきた音楽を取り入れながら、バラバラなようで統一感もあって、自分の中でも色々な挑戦が出来たアルバムになっているかなと感じています。


ー『僕と青』の時には、弾き語り音源をアレンジャーさんに渡して編曲してもらったそうですが、今作では少し違いがあったとか。

今作は最初からこういうサウンドにしたいという自分の意思があった上で、再現できるところまで僕が打ち込みで再現してからアレンジャーさんに渡して「こういう感じにしてはどうだろう?」と色々相談しました。だから前作よりも更に自分が目指すサウンドに近づけたと思います。


ー 先日「テイクイットイージー」のミュージックビデオ(以下:MV)が解禁になりましたが、ダンスシーンが多くて驚きました。

ああ、そうですよね(笑)。


ー 韓国ロケはいかがでしたか?

韓国は初めてだったんですが、すごく寒かったです。とは言え、踊っている時は集中していたせいか、あまり寒さを気にはしていなかったんです。でも帰国してから体調を崩しました(笑)。深夜の便で韓国に飛んで、朝から夜まで撮影。一泊して次の日も撮って、その日の夜便で帰ったので結構ハードスケジュールだったし、多分気も張っていたんでしょうね。


ー 監督が写真家の松永つぐみさん。彼女もまだ若干23歳にしてさまざまな音楽シーンやファッションシーンなどで活躍していますが、どういうお話をしながら撮影は進みましたか?

僕の思うように動いて良いと言ってもらえました。一緒にMVに出ていたダンサーの方は振付師でもあるんですが、ダンスの練習期間も2日間しかなくて。僕としてはダンス経験ゼロからの2日間でした(笑)。


ー ダンス経験ゼロにはまったく見えなかったです。

いやいや、全然やったことなくて。“これで合ってるのかな?”と思いながら踊っていましたが、瞬間瞬間で忘れちゃうこともあるので、そこは即興でそれっぽい動きをして…(笑)。でも楽しんで踊れたし、出来なくて笑って誤魔化すよりは、楽しんでいる姿を撮れる方が良いんだろうと僕も思ったので、そこは意識しました。


ー この「テイクイットイージー」はサウンドも歌詞も、 例えば<こうじゃないと格好良くない>とか<こうあるべき>という、ある種の偶像みたいなものから解き放ってくれる 開放感を感じました。

僕の中で前作をリリースして以降、自分の曲が色々な人に聴かれているんだと実感し、曲を作る上で人に聴かれるという意識が作品作りで反映されるようになりました。この曲はそういう中で出来た曲です。世の中には色々なタイプの背中を押す曲があると思うんですが、僕自身が悩んだ時にどういう言葉をもらったら嬉しいか考えたんです。僕は「努力してきたんだからお前の努力は報われるよ!」って強く言われるより「いやー、才能あるから大丈夫っしょ」って軽い感じで言われる…それこそタイトル通りテイクイットイージー的な気楽さや気楽な言葉が嬉しいと思ったんです。僕はまだ成人したばかりだし、経験も浅い中で今回メジャーデビューも決まって、“大丈夫かな…”って不安を感じる瞬間があったんですが、そのままで大丈夫だからという言葉が実際嬉しくて。僕と同じようにそういう言葉を待っている人はいると思うんです。


ー 軽快さの中に、音のLRの振り方や、勢いで出た声の躍動感など繊細なサウンドバランスを感じました。

この曲や「アージ」、「アイラブユーにはアイラブユー」に関しては、自分の好きな洋楽のサウンドにおけるテンポ感やメロの雰囲気をかなり素直に反映しています。前作からの変化で言えばやはり洋楽をよく聴くようになったことは大きいと思うんですが、音としてもっと面白いことをしたいなと考えるようになったんです。ありがたいことに、声の良さにスポットを当てて頂くことが多いですが、僕はその先を目指したくて。曲も音作りも良いと言われる音楽的な面白さを表現できることもアピールしていきたいし、みんなが気持ち良くなれるような音をもっと追求していきたいです。


ー 今作ではバンドサウンドの疾走感やアコースティックの温かみなど、サウンドの面白さは本当に色々な曲で感じました。

MIXチェックでも何度かやり直してもらって。それくらい今作は音作りにこだわりました。


ー 歌詞が「愛し合い」から始まっているのに「狭いベッドに愛はない」で終わる「ダイバー」は気になりました。

そこの歌詞は僕もあまり理解していなくて…。


ー ん?

というのも、歌詞を書いている最中に、“狭いベッドに愛なんてないじゃん”って急に思い始めたんです。そんな心境の変化を踏まえて書いていったら最初と全然矛盾してしまい、あまりに僕も訳がわからなくて。ただ、そのフレーズが大切に感じて。でも本当に矛盾しているから直そうと思ったんです。そしたらアレンジャーの岩崎さんに、このフレーズが謎を残す感じが面白いと言ってもらえたんです。