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【コラム】オフィス オーガスタ特集 Vol.4 後編

【コラム】オフィス オーガスタ特集 Vol.4 後編

February 17, 2016 21:00

オフィスオーガスタ

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株式会社オフィス オーガスタで、原盤制作ディレクターを務める半田悠氏。前回、入社の経緯とスキマスイッチの話をメインで語ってもらったが、今回はさかいゆう、松室政哉などのアーティスト話や、制作ディレクション、タイアップ&キャスティングプロモーションという仕事を通じて大切にしていることなどを伺ってみた。


ー スキマスイッチさんに関しては、アルバム『グレイテスト・ヒッツ』(2007年)まで担当。 大橋卓弥さんのソロアルバム『Drunk Monkeys』(2008年)にも携わり、その後、さかいゆうさんの制作ディレクションも担当されたとか。

彼が2009年にデビューした時から『さかいゆうといっしょ』まで携わりました。さかいゆうは、僕の中に全く無かったものを教えてくれた人です。


ー 全く無かったもの?

R&Bやブラックミュージック、ヒップホップです。


ー なるほど。

僕はJ-POPしか聴いて来なかったような人間なので、そういう音楽は全く通って来なかったんですよ。聴く音楽自体もそうですが、彼と一緒に音楽を作っていると、お呼びするミュージシャンも今迄関わったことのない、ルーツミュージックが全く違う人たちなので、当時はどうしてよいか分かりませんでした。まずノリが違うし、この音をどう組み合わせていったら彼の思い描く音になるのか、分からなかったんです。『ストーリー』をリリースした時は、本人のマインドもJ-POP寄りになっていたし、僕もJ-POPというジャンルなら彼の力になれると思っていました。そこが合致していたから『ストーリー』や1stアルバム『Yes!!』はあの形に着地できたんだと思います。でも一緒に制作を続けていくうちに、彼のルーツとなる部分がどんどん溢れ出てきて。


ー『ONLY YU』から結構出てきましたよね。

そうなんです。で、僕もそこに追いつかなきゃと思って、色々な音楽を聴きましたし、沢山の人に話を訊きました。だからさかいゆうは、僕の中になかった音楽を教えてくれた人。そして、今まで触れてこなかったそのジャンルがすごく好きになりましたね。ジャンルで言うと、さかいゆうというアーティストは何になるんでしょうね?


ー 多分J-POPの括りにはなるんでしょうが、でもやっている音楽はやはりジャズでありヒップホップでありR&Bであり。

カテゴライズしづらいんですよね。秋山さんはインタビューなどでご存知だと思うのですが、彼はその時その時で「今」自分がやりたいことを追求するタイプじゃないですか。


ー そうですね。そこが面白いんですが。

実はさかいゆうの最新作『4YU』のディレクションはオーガスタではない外部のディレクターさんが担当してまして、その方は僕が勝手に憧れていた人でもあるんです。


ー それは何故ですか?

その方はデビュー当時からずっとスピッツのディレクターをされている人なんです。


ー 半田さんが唯一CDを買い続け、今でも大好きなスピッツですね。

ええ。だから前回の話に戻っちゃうんですが、その方は僕が「ディレクターって何?」という興味を持った段階で、一番最初に認識したディレクターで。今、そういう人と同じ仕事をできていることを不思議に思いますし、更に僕が担当していたアーティストをディレクションしてくれている、この状況に個人的にはすごく感動していて。そういう人とさかいゆうが一緒に組んで『ジャスミン』や『4YU』を作ったんだと思うと、感動しつつやっぱり悔しい(笑)。

20160217Handa_san01.jpgー なるほど(笑)。『4YU』はさかいさんのルーツミュージックというかベーシックな部分を、サポートミュージシャンの方々と、気負いなく楽しんでいると感じました。

こういう言い方が正しいか分からないけど、僕の印象としてはサラッとしているなと思ったんです。無理がないというか。


ー すごく分かります。

これは決して批判ではないので誤解してほしくないのですが、J-POPって大仰なんですよね。ここで抑えて、ここで盛り上げる、みたいな展開をすごく考えて組み立てていくものだと思うんです。ある種、感情を意図的にコントロールするというか…。だからこそ感動できる部分もあるんですけどね。でもそういうものを取っ払って、さかいゆうみたいなアーティストが今やりたいことをなんの狙いもなくサッとやってしまう。そしてそれがただただカッコいい!そういうものは僕がやろうと思っても出来ないので、すごく羨ましいと思いましたし、それを引き出した今のスタッフも素晴らしいと思います。