POPSCENE - ポップシーン
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NakamuraEmiの「ばけもの」から見えてくる女とは。

NakamuraEmiの「ばけもの」から見えてくる女とは。

May 29, 2019 00:00

NakamuraEmi

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“この人は私を幸せにはしてくれない”

ドキッとする歌詞から始まるNakamuraEmiの新曲「ばけもの」。NHK(総合)ドラマ10『ミストレス~女たちの秘密~』の主題歌として書き下ろされたこの曲に対し「ドラマに登場する個性豊かな4名の女性と頑張る女性へリスペクトを込めて出来た曲です。」とコメント。2016年に日本コロムビアよりアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST』 でメジャーデビュー。主に<女性>をメインに据え、自身の感情や経験をテーマによって削り取る彼女の作風は、HIPHOPのリズムと泥臭い歌詞、時折見せる可愛らしさや温かさでコアなファンも多い。

ポップシーン読者にはご存知の方も多いと思うが、筆者もその一人だ。NakamuraEmiが大好きだ!彼女の音楽が大好きだ!小さい身体でパワフルに歌いながら女性らしさは忘れない。インタビューなどで会えば華奢な腕でハグしてくれ、チョコを分けてくれる。涙もろくて笑い上戸。スタッフに愛され、関わる人間を大切にする。

しかしそんな彼女だって生身の人間だ。腹も立てば、気持ちがささくれ立つことも当然あるだろう。だがもし周囲へ酷い態度を取ったとしても、愚痴や落ち込んだ様子をSNSに投稿したり周囲の人間に甘えたりせず「あぁ、何であの時…。」と、愛車の中で自分を責めながら後悔するに違いない。

世の中には周囲の人間に上手く甘えたり、簡単に弱音を吐ける人がいる。今の時代ならSNSでそういう投稿を目にすることも増えているだろう。それは一種の才能でありスキルだ。だがその一方で、歌詞にもあるように神様は女性に辛抱強さを与えている。女性自身、そのことを心身で分かっているからこそ、巧みな甘えテクを発揮する人もいれば、逆にその辛抱強さを我慢に変えて美徳にする人もいる。きっとNakamuraEmi本人も後者だろう。

だが<弱音を吐かない=強い>わけではない。素直に弱さを見せられないからこそ苦しむのだ。しかし残念なことに、<あの人は強い><あの人は放っておいても大丈夫>と誤解され、それでも心の奥底に「だって」を押し込み、仕事と世間と自分と戦う。「ばけもの」にはそんな弱音を吐けない、自身に“ややこしい鍵”をかけた女性の本音が詰まっている。

“Tシャツズボンに入れて寝たいし 野菜よりお肉が食べたい 「だって」つって大泣きしたい”

ユニークさの後にリアルに感情が溢れ出す。ただ先程も触れたように、女性には元来の辛抱強さもある。だからこそボロボロの自分から這い上がり、丁寧にネイルを塗って笑顔で明日に立ち向かうパワフルさや、今まで落ち込んでいたのにInstagramで美味しそうな映えスイーツを見つけた途端にテンションを上げる切り替えの早さなども兼ね備えている。怒ったり泣いたり笑ったりと切り替えモードを作動させながら様々な表情(かお)を持つのが女性なのだ。

ラストの歌詞は意味深な冒頭の答え。 (筆者含め)納得したくないが納得してしまう自分を感じている人もいるのではないだろうか?それでも本当は弱音を吐いて「だって」と言いたいし甘えたい。うーん、 “ややこしい鍵”は本当にややこしい。蛇足になるが、あまりに“ややこしい鍵”に飲み込まれそうになった時は「雨のように泣いてやれ」という特効薬もある。

今作はNakamuraEmiのサウンドに欠かせないカワムラヒロシ氏との共作。カワムラ氏のギターをはじめ、サウンドのグルーヴ感や歌の表現力も聴きどころだ。

さて、今回のジャケット写真に目をやるとNakamuraEmiが、群生するヒメツルソバに顔を埋めている。香りをかいでいるようにも見えるし、黒っぽい背景のせいだろうか…飲み込まれているようにも見える。ウィキペディアで調べてみると、ヒメツルソバ(姫蔓蕎麦)は金平糖のような集合花で、開花時のピンク色が徐々に白へと変化。真夏には花が途絶え、冬に降霜すれば地上部が枯死するも地面が凍結しない限り翌年には新芽が成長するとある。道端で咲いているのをよく見かける。花言葉は、「愛らしい」「気が利く」「愛らしい」「思いがけない出会い」。この花言葉からも分かる通り、群れの中に生き、変化しながら弱さも強さも持っているヒメツルソバはまさに女性そのものだ。

今回、表題曲「ばけもの」はすでに先行配信されているが、NakamuraEmiとしては初のシングルとして5月29日にリリースされる作品には、今年4月9日に開催された『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6~Release Tour 2019~ Acoustic公演』三重 松阪M’AXA公演のライブ音源(「Don’t」「甘っちょろい私が目に染みて」「バカか私は」「かかってこいよ」「モチベーション」)も収録される。このライブと移動中の映像をまとめたドキュメンタリー映像はYoutubeですでに公開されているので、そちらもチェックして欲しい。

現在開催中の『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6 ~Release Tour 2019~』はすでに【Acoustic公演】を終え、6月11日(火)愛知・DIAMOND HALLを皮切りに【Band公演】がスタートする。更に6月22日(土)からは「ばけもの」発売記念インストアイベントが川崎、大阪、名古屋で展開されるので、NakamuraEmiそのものの魅力と、彼女のライブの魅力を是非堪能してもらいたい。

Text:秋山雅美(@ps_masayan


■ NakamuraEmi Official HP
http://www.office-augusta.com/nakamuraemi/

■ 日本コロムビアHP
http://columbia.jp/nakamuraemi/

Information

Release

NakamuraEmi
「ばけもの」

2019年5月29日発売

-収録曲-

1. ばけもの ※NHK(総合)ドラマ10『ミストレス~女たちの秘密~』主題歌
2. Don’t(Live)
3. 甘っちょろい私が目に染みて(Live)
4. バカか私は(Live)
5. かかってこいよ(Live)
6. モチベーション(Live)
※Tr.2〜6:『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6~Release Tour 2019~ Acoustic公演』2019.04.09 三重 松阪M’AXA公演ライブ音源

■ デジタル配信:COKM-42423 ¥900(税込)
収録曲
1. ばけもの ※NHK(総合)ドラマ10『ミストレス~女たちの秘密~』主題歌
2. 雨のように泣いてやれ(Live)
3. 使命(Live)
4. 甘っちょろい私が目に染みて(Live)
※Tr.2〜4:『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.6~Release Tour 2019~ Acoustic公演』2019.04.09 三重 松阪M’AXA公演ライブ音源

ばけもの

初回生産限定盤(CD)

COCA-17637 / ¥1,204+税

ばけもの

通常盤(CD)

COCA-17638 ※初回生産限定盤がなくなり次第、通常盤に切り替わります。 / ¥1,204+税

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