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高橋 優 LIVE TOUR 2018-2019「STARTING OVER」3.3 横浜アリーナ ライヴレポート

高橋 優 LIVE TOUR 2018-2019「STARTING OVER」3.3 横浜アリーナ ライヴレポート

April 7, 2019 10:00

高橋優

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桜の開花宣言から1ヶ月以上遡った3月3日(日)、高橋 優は横浜アリーナで最高の景色に目をうるませていた。

昨年10月にリリースしたアルバム『STARTING OVER』を引っさげたツアー【高橋 優 LIVE TOUR 2018-2019「STARTING OVER」】を同年12月からスタート。4月6日(土)沖縄県・ミュージックタウン音市場での【高橋 優 LIVE TOUR 2018-2019「STARTING OVER –LIVE HOUSE EDITION-」】で無事ファイナルを迎えた。筆者のレポートした横浜アリーナ公演は3月2日(土)・3日(日)の2DAYS。3日は生憎の雨模様だが、2012年、神奈川県民ホールで観た【秋の全国ツアー~高橋は雨男?晴れ男?はっきりさせようじゃないか2012】のタイトルを思い出して、それもまた悪くない。

まもなくのスタートを告げるアナウンスに拍手が起こると、それはいつしかクラップへ変わっていた。ザッザッザッ…響く足音。ギターを持ち、歩く後ろ姿のシルエットがスクリーンに映し出される。そのシルエットがタイトルロゴに飲み込まれると、次の瞬間スポットライトを浴びてステージに立つ高橋の姿が。バンドメンバーはUZMK DUTTCH(Dr.)、小島タケヒロ(Ba.)、須磨和声(Vn.)、平畑徹也(Key)、池窪浩一(Gt.)。「ルポルタージュ」のイントロ、うねるアコギと歓声が入り交じる。一発で高橋のコンディションの良さが分かる歌声はオープニングから会場を熱狂させ、すぐさま 「ストローマン」へ。クールなAメロのフロウとダークな雰囲気は実に新鮮だ。しかし繋がりの残量を皮肉な歌詞に込めるあたりはやはり高橋らしい。

「会いたかったですよー、ヨコハマー!」スタンド、アリーナ、センターと見回しながらそれぞれに挨拶。夢や希望を抱いていた出発地点は時間の経過と共に忘れそうになる。現に高橋自身もそうだったらしいが、一番最初に自分が思い描いていた景色、憧れ、夢を忘れる必要はないと気づき、何度でも再出発は出来るという想いで<再出発>を意味する『STARTING OVER』を名付けたと、アルバムタイトルについて語り始めると、「このライヴに来て下さる皆さんと一緒に、明日が楽しみで楽しみでしょうがなくなるような、そんなワクワクする時間を過ごしたいという願いを込めて、今回このツアーも全く同じ『STARTING OVER』とさせて頂きました。」と、ツアー名についても語った。熱い口調で語る高橋の言葉を静かに聞き入っていたオーディエンスだが、惜しむらくは肝心なところで(やはり)噛んでしまったこと。笑いと「頑張れー!」の声が飛び、とうとう高橋自身も笑い出してしまう始末(笑)。いつもの楽しげな雰囲気になると「昨日を越えようぜ!最高に熱い夜にしようぜ、ヨコハマー!よろしくお願いしまーす!」と盛り上げ、「美しい鳥」へ。

自分の心がワクワクしたり、感動したりする気持ちを音楽で奏でたいという想いから作られたこの曲。普段見落としがちなことに目を向けた言葉たちはメロディから溢れ出しそうになりながら、ピアノの温かな音色に乗せてオーディエンスへ羽ばたく。更に東海テレビ・フジテレビ系 オトナの土ドラ『結婚相手は抽選で』主題歌として話題を呼んだ「aquarium」へ。「STARTING OVER」のイントロ、静かなピアノは荒れ狂うバンドサウンドに乗っ取られ、表情豊かな高橋の歌声は「もうダメかって時こそ音楽が鳴り響く」と歌う。クラップをし、足を鳴らし、音楽を全身で楽しむオーディエンスの輝かしい笑顔。ずるい…筆者は高橋優というシンガーソングライターに対してよくそう思う。こんな素晴らしい曲を書き、こんな素晴らしい景色を見せられたら、もっともっとあなたの音楽を聴き、ライヴを観続けたい。人生の傍らにあなたの音楽を置いておきたいと思ってしまうから。

20190407Y_0208.jpgそんな感動の涙を笑いの涙に変えたのはMC。この日のネタは<高橋の目が笑っていない>こと(笑)。テレビ出演後にエゴサーチした中でも一番多い感想だったらしいが、メンバーのダッチ(UZMK DUTTCH)にも「いやぁ優くん今日、目が笑ってへんかったから、目死んでたから大丈夫かなと思って。」と言われてしまったそう。淡々と、しかしどこか嬉々として自虐ネタを話す高橋に関係者エリアまで爆笑。そこから同エピソードは、ツアーが始まる頃に新しく入った若き現場マネージャーN氏へ矛先が向けられた。自身の目が笑っていないことで何度か避けられた話が次から次へと…(笑)。あまりに気になったので、オブラート5枚位に包んで(本人曰く)優しくN氏に話した……つもりでいた高橋。ふと鏡に写った自分の顔を見て一言。「めっちゃ目、死んでたんですよ!」即、爆笑!「優しい男の子になって欲しいという願いを込めて親につけられたこの名前。優という名前で生きてきて暫く経ちますよ。優しさって何だろう。笑顔って何だろう。そういうことを考えて書いた曲を次に聴いて頂きたいと思います(笑)。」まるでオチをつけるように「いいひと」へ。アルバムの中でもこの曲はかなり異色だがシュールでリアルで面白いが、MCネタのクオリティが高すぎるだろう(笑)。

気持ちを切り替え(笑)「キャッチボール」へ。この曲はなんといってもサウンドの抜け感が心地よい。元々は音数も多く、ゴージャスな仕上がりになる予定だったと、アレンジ面での紆余曲折をアルバムインタビューで語ってくれていた。時間を置き、高橋の思うアイデアをスタッフやアレンジャーに沢山ぶつけたことで新鮮ささえ感じる新たなサウンドが生まれた。オルガンの音色、メロディライン、線画のアニメーションが温かく心に染み入る「若気の至り」。3月15日から上映中の映画『まく子』主題歌でもあるこの曲で高橋は繊細な歌の表情を見せた。

20190407Y_0258.jpgバイオリンの奏は、若き日を懐かしむ時に決まって訪れる甘い切なさ。オーディエンスも自身のアルバムを振り返るようにそっと聴き入っている。「最近、柄にもなく自分の部屋の窓に花を飾ってみたんです。」こうやってライヴができることに幸せを感じつつ、家とスタジオの往復も多い高橋は、部屋に花を飾った、ただそれだけのことで平凡な日々に彩りが増した気がすると言う。そして、音楽を聴いてくれる人たちに花を添えられるような楽曲を奏でたいと作った「非凡の花束」を丁寧に丁寧に歌う。

足音と映像。これはオープニングに流れた映像だろうか?…いや違う。札幌の狸小路だ。高橋がデビュー前、ストリートライヴをしていた場所。当時の写真が次々映し出される中で歌う「プライド」。写真はどんどん現在へと近づく。横浜アリーナを沢山のオーディエンスで埋め尽くす今に至るまで、高橋はどれだけの苦悩と努力を繰り返したのだろうか。彼の歌と人間性に多くの人間が魅了され急成長を遂げた今もなお、声高らかに「生きていく意味を作り出すのさ 何を失っても」と歌い、人生の応援歌を聴くオーディエンスは心なしか胸を張っているように見えた。

「さぁここからひとつになるぞ、ヨコハマー!」ライヴでも人気の高い「象」の特徴的なギターフレーズが鳴れば、会場のテンションも一気に上る。続く「高野豆腐~どこか遠くへ~」では高橋を主役にした漫画が繰り広げられた。様々な漫画のオマージュを取り入れながら、少年漫画、少女漫画、劇画、ギャグ漫画と歌詞によってタッチを変え、見ているだけで楽しい!

ライヴも後半。筆者は、秋田弁で<お腹いっぱい>を意味する<はらつえ>をタイトルにした「Harazie!!」をライヴで観るのが楽しみで仕方なかった。james brownの「sex machine」をフィーチャーしたイントロとメロディラインにサイケデリックな映像、弾けきったファンキーな高橋。やはり最高だ!タイトルだけでなく全編秋田弁で構成される歌詞。曲の掛け声の意味もレクチャーしながら横浜アリーナに秋田弁が飛び交う!エンディングをアグレッシブなドラムプレイで〆ると間髪入れずに「明日はきっといい日になる」へ。発射された銀テープでセンターとアリーナ席はキラキラと波を打つ。

20190407Y_2608.jpgメンバーのクールなソロプレイが怒涛の勢いで音を重ねると、ほんの一瞬の静寂を挟み、高橋の生々しいアコギの音が「こどものうた」のイントロをかき鳴らす。大歓声は横浜アリーナを揺らしながらどんどんボルテージを上げ「最高!」の声が会場のあちこちから飛んだ。

「まぁ楽しい2日間になることは想像してたけど、僕の想像は甘かったな…。」オーディエンスの熱量の高さに驚き、感謝する高橋は「すべてを見せ合えるといいますか、今日の横浜の皆さんが見せてくれた表情とか聴かせてくれた声とか手拍子とか、そういったのを思い出したら、どんな憧れの場所にも向かっていける気がします。本当に今日はどうもありがとうございました。」と続けると、その言葉に鳴り止まない拍手。高橋はその拍手を、その光景を、心に刻み込むような表情で見ていたが、油断すると泣いてしまいそうだったのだろう。少し涙ぐんでいるようにも見える高橋は「まぁまぁまぁ」と、少し冗談めかした口調で拍手を抑えた。だが真摯な言葉は続く。

「これからどういう道を歩いていくにしても、道の先でどういうことが待っていたとしても、今ここ横浜アリーナで3月3日、日曜日に皆さんと一緒に経験させてもらったこの気持ち、今…ここに在るもの、これだけは何があっても絶対に忘れないで歩いていきたい。」そう言葉にすると、本編は「 ありがとう」で締めくくった。「Harazie!!」があることで、本編のフックだった「泣ぐ子はいねが」はアンコールに。(因みに恒例のレスポンスは雛祭りに因んで「あかりをつけましょ ぼんぼりに」)

20190407Y_0827.jpgタオルを回し、レスポンスするオーディエンスに「マジでカッコいいぜ、ヨコハマ!」と笑顔。出来るだけ早く会いに来ると約束すると、最後は「リーマンズロック」を合唱。高橋とオーディエンスが一体感となるこの瞬間は本当にしびれる。曲が終わると高橋はオフマイクで何度も「ありがとう」を言った。恒例のSE合唱は勿論「STARTING OVER」。満面の笑顔で手を振り、サビを歌い「ありがとう、ヨコハマー!!」と叫ぶと最後は眼鏡を取って深々お辞儀し、退場。いつものように自筆のメッセージが映し出され【高橋 優 LIVE TOUR 2018-2019「STARTING OVER」】横浜アリーナ公演は幕を閉じた。

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Photo:新保勇樹
Text:秋山雅美(@ps_masayan



□ セットリスト
M1. ルポルタージュ
M2. ストローマン
M3. 太陽と花
M4. 美しい鳥
M5. aquarium
M6. STARTING OVER
M7. 羅針盤
M8. いいひと
M9. シンプル
M10. キャッチボール
M11. 若気の至り
M12. 非凡の花束
M13. プライド
M14. 象
M15. 高野豆腐~どこか遠くへ~
M16. 虹
M17. Harazie!!
M18. 明日はきっといい日になる
M19. こどものうた
M20. ありがとう

En1. 泣ぐ子はいねが
En2. ロードムービー
En3. リーマンズロック


■ 高橋 優 オフィシャルサイト
https://www.takahashiyu.com/

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