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COIL 岡本定義『シンガーとソングライター 〜COIL 20th Anniversary〜』インタビュー

COIL 岡本定義『シンガーとソングライター 〜COIL 20th Anniversary〜』インタビュー

August 29, 2018 19:30

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ー 個人的には杏子さんが大好きなので、この曲で滲み出ている大人っぽい色気は憧れます。さかいゆうさんの“奇麗な果実”も大人っぽいメロウな曲調で心地よいです。

スキマスイッチと秦くんがわりとビートの効いた曲なのに対して、杏子さんとさかいくんの曲はベットサイドミュージックというか。ウィスパーではないけれど囁いている感じで、よりリラックスしている雰囲気を出したかった。それが上手く出せたんじゃないかな。さかいくんはソウルフルにも歌えるし、しっとりバラードも歌えるし本当に万能。


ー シャーデーとかをカヴァーしても本当に素敵ですしね。

そうだね。ただ今回は上手くやりすぎない、そこはかとなさが欲しかったから、そこはさかいくんにも伝えました。でも今回面白かったです。あえて名前は出さないけど、すごく予習をしてストイックに歌いこんで歌いこんでいく人もいれば、何の準備もしないで「よし、やりますか!」ってスタジオに入ってバッってやる人に分かれて。


ー それぞれの個性が出て面白いですね。今回、M1とM7に“intro”が入っていますね。ちょうどレコードをひっくり返すみたいに。

たまたま遊びでピアノを弾いてもらったものを録っておいて、もし使えたら使おうと思っていたんです。 僕が歌う”メロディ~君のために作ったんだから~”という曲はファッションショーのデザイナーが最後に出てくるイメージで、アルバムの最後、 もしくは一番最初に考えていたんだけど、ふとその曲のメロディがピアノで散りばめられているのって良いかもしれないとアイデアが浮かんで。本当はアルバムの最後に映画のエンドロールみたくするのも面白いと良いかと思ったんだけど、ちょうど最初と中間にこの “intro”が入ることで、レコードみたいな雰囲気も出せたしね。

20180829DSC_5754.jpgー 実際、 “intro”があることで、良い具合にさかいさんの曲から竹原さんの曲に繋がりを感じました。

そうだよね。映画の編集と一緒。次のシーンへ行く前に、直接関係ない映像を入れることで場面転換が上手く出来る感じ。


ー なるほど!その竹原さんの“平日のアリバイ”はちょっと歌詞が独特な世界観ですね。

川端康成のような日本の古い文学的雰囲気を出したかったんだよね。エーゲ海が山ちゃんだったらピストルは生まれが千葉だから九十九里か。もしくは熱海か真鶴か。そんな海の感じ。


ー ちょっとイケナイ大人の世界にも感じるんですが、竹原さんの歌声がまた妙に沁みますし。

ピストルのアクの強い雰囲気も欲しいんだけど、やはりトーンを押さえてあまりToo Muchな演出よりも、少ない台詞の中でその佇まいで見せる方がこの曲にはあってるんだよね。彼は役者でもあるからそういう部分もイメージしました。


ー 背中で物語るみたいな。

そうそうそう。


ー 竹原さんは野狐禅時代も含めお付き合いとしては長いと思うのですが、お二人で会うとどういう話をされるんですか?

ピストルは北野武監督が好きで、僕も映画が好きだから映画の話も多いかな。あと漫画の話。「GOLDEN LUCKYっていう漫画が好きなんですよ!(竹原)」「あー、あの漫画、僕も好きなんだよ!(岡本)」って盛り上がったり。だからレコーディング中も音楽の話というより映画や漫画の話が多かったね。


ー 長澤知之さんとの“砂漠の部屋”は聴いた途端、魂を持っていかれました!何故こんな良い曲が書けるんだろうって。

それは是非大きめの太字で記載しておいてください!


ー アハハ!

結果的に長澤くんっぽい曲になったし、 彼の声のサイケデリック感も凄いから上手いことハマったね。コード進行も不思議な落ち方をしてるし、楽器も本当はギターやストリングスを入れようと思えば沢山入れられるんだけど、あえてスカスカにすることで聴いている人が「私、ここでどうしてもフルートの音が聴こえる」とか「歪んだギターが聴こえる」ってイメージを膨らませ易いんじゃないかな。だってこの曲も音を足すのを我慢したんだもん(笑)。


ー どこか“Free as a Bird”的な不思議な浮遊感も感じました。

ああ、なるほど。あとね、70年代初期ののデヴィッド・ボウイはイメージした。まだグラムロックやテクノにいく前のね。ビートルズっぽい匂いも残しているデヴィッド・ボウイが大好きでイギリスのポップス感が良いんだよね。洋楽っぽいという意味では、ちとせ(元 ちとせ)が歌った“幸福な別離”も洋楽の雰囲気にしたくて、メロディもそうだけど歌い出しを英語にしてみました。奄美特有のこぶしやファルセットボイスがちとせの大きなカラーだし良いところなんだけど、他の曲同様あえて抑えて、しかもメロディ展開も幅広くしなかった。アルバムにひっそり入っている「地味なんだけど、あの曲好きなんだよね」と言われるような曲にしたかったから。この曲には波の音が入っているでしょ。


ー ええ。

それが、奄美かどこかの波打ち際を歩きながら、誰に聴かせるわけではないけど思わず口ずさんじゃったメロディっていうイメージかな。


ー そういう雰囲気があります。ただこの曲は歌詞で多くを語っていないだけに、そのシチュエーションが気になりました。

この曲の主人公は悲しいのか、ちょっと満たされて温かい気持ちなのか分からない。でも「別離」がテーマの曲を感情を込めすぎずに歌うと受け取る人はどう感じるのかを実験しながら書きました。曖昧でどちらとも捉えられるような歌詞でね。例えばフランス映画ってオチが曖昧だったり、ストーリー自体も「これどういうこと?」って多いでしょ。ああいうのが好きで。


ー ヌーヴェルヴァーグ的な?

そうそう!キューブリックとか良いよね。あとフェリーニも1カット1カット、とても綺麗だし「あの台詞はどういう意味なんだろう?」って考えるのが結構好きだから、その辺の手法もこのアルバム自体で取り入れています。

20180829DSC_5737.jpgー HaiRiさんとの“LOVE★G~愛の重力定数~”ですが、彼女の声は素敵ですよね。

良いよね。18歳のピュアさがある彼女にちょっとだけ大人びて背伸びしたことを歌ってもらおうと思って。最初はもう少し高いキーだったんだけど、下げて歌ってもらうことでアルバムとしての収まりが良くなったし。今アルバムは同じラインを歌うことはあっても、コーラスはひとつもないんだよね。


ー そういえばそうですね。

それは『ALL TIME BEST 〜福耳 20th Anniversary〜』の方で楽しんでもらって、こちらはスタンダードミュージックではないけれど、昔の歌謡曲って山口百恵さんにしろ沢田研二さんにしろ一人で歌ってるじゃない。ああいうイメージ。


ー なるほど!そこでも両アルバムの音のコントラストを楽しめますね。

そうそう。HaiRiちゃんもカヴァー曲は別としても人から提供された曲を歌うことは今までしていなかったから、すごく喜んでくれて。彼女は音楽の幅も広いんだけど、何をやっても器用にこなすさかいくんとも違って、自分のカラーでその曲を表現しているような気がするから、これからが楽しみですね。


ー この曲は“夏はこれからだ!”のイントロを彷彿とさせました。

あー、そうだね!あるある、あのイメージ!秦くんの曲もポップだけど、あの曲はどちらかというと洋楽的ポップさ。“LOVE★G~愛の重力定数~”は、“夏はこれからだ!”と一緒でジャパニーズポップス感が強い。このアルバムの中では歌詞も多くて曲も長めだし、構成もAメロ、Bメロ、転調して大サビっぽいものがあったりしてね。


ー 今回のアルバムに “LOVE★G~愛の重力定数~”みたいなタイプの曲が入ると、またフックになりますね。

そうそう。本当はこのアルバムに“八月の夢”も入れようか考えたんだけど、この曲は福耳用に書いた作品だし、構成も複雑で音数も多いからちょっと違うのかなと思って。でも HaiRiちゃんのこの曲が入ったのでバランスも良くなった。このひとつ前がちとせのシンプルな曲だったから、曲順的にも良かったし。

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