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高田漣、長岡亮介ら豪華メンバーと魅せたデビュー15周年記念コンサート

April 19, 2018 11:30

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高田漣、長岡亮介ら豪華メンバーと魅せたデビュー15周年記念コンサート

「この会場の良いところはお酒が飲めるんです」。高田漣がステージでそう言うまでもなく、開場前から観客はロビーでお酒を飲みながら談笑して、コンサートが始まるのを楽しみに待っていた。ちょっと大人な雰囲気の日本橋三井ホール。開演5分前、コンサートの案内をしていた女性のナレーションが「涙、涙の人生劇場、『ナイトライダーズ・ワルツ』の始まりです」と告げると会場がどっと沸く。ステージに登場したのは5人のバンド・メンバー。伊藤大地(ドラム)、伊賀航(ベース)、ハタヤテツヤ(ピアノ)、野村卓史(キーボード)、そして、高田漣(ヴォーカル、ギター)。伊藤大地の機関車ドラムに乗って出発進行! 『Ready to Go〜涙の特急券〜』で、高田漣のデビュー15周年を記念するコンサートは勢い良くスタートした。

曲が終わると高田は神妙な顔つきで、「今日はデビュー15周年ということで、MCをたっぷりしようと手紙を書いて持って来ました」と紙を広げる。バックでビリー・ジョエル「オネスティ」を感傷的に弾くハタヤ。高田はこれまでのキャリアを振り返り、父親・高田渡の想い出を語り、感極まって「オネスティ」を歌い出したりと観客を和ませて、大滝詠一「びんぼう」、細野晴臣「僕が一寸」とカヴァーを立て続けに演奏。どちらもライヴ会場限定で発売されている『Kitchen Tapes』からの選曲だが、コンサートの冒頭で演奏するあたり、二人に対するリスペクトが伝わってくる。

ゲストの渡邊恭一が呼び込まれると、渡邊がクラリネットを吹き、伊藤がセカンド・ラインのリズムを刻んでニューオリンズ風味たっぷりに「ラッシュアワー」。続いて、バクバクドキンの二人がコーラスに参加しての「ハニートラップ」では、渡邊はサックスとクラリネットの二刀流で大忙しだ。続いて新曲「ハローフジヤマ」がお披露目されたが、「ハニートラップ」の路線を受け継ぐ楽しいナンバー。高田は「耳には残るけど心に残らない曲です」と笑っていたが、確かに今もサビの「ハローフジヤマ」という鼻歌めいたフレーズが耳のなかでこだましている。

コンサートの中盤は、バンドメンバーはいったん退場して高田ひとりで弾き語り。父親・高田渡の「コーヒーブルース」を歌った後、「今日は大杉漣さんを送る会があったんですけど、コンサートがあるので行けなくて。今も大杉さんがふらっと楽屋に来てくれるような気がします」と大杉漣がよく歌っていたという「生活の柄」を歌ったが、歌を通じて大杉漣の人柄が伝わってくるような歌唱だった。父親の曲2曲に続いて、自作の「月夜の晩に」も弾き語りで、しっかりと独自のスタイルを持った歌声に、デビュー15年という月日の重みを感じさせた。飄々とした軽やかさがありながら、ふくよかな余韻を残す歌声がじんわりと胸にしみる。

「木漏れ日のメロディー」「パレード」「熱の中」といった映画関係の曲を挟むなど、高田の幅広い仕事ぶりを振り返ったところで、ギタリストの長岡亮介がゲストに呼び込まれる。「今日は何をしてもいいですから」と高田のMCを受け、「絵空事」「野バラ」と高田とツイン・ギターで弾きまくる長岡。「ナイトライダー」の後半では、高田が弾くバンジョーと長岡のエレキ・ギターの掛け合いがアツい!息が合ったバンド・サウンドを味わいながらコンサートはクライマックスへ突入……する前に、この日、誕生日を迎えたハタヤにサプライズのケーキ進呈が行われた。そして、「きっと、次の曲でハタヤくんは小憎らしいピアノソロを弾いてくれると思います」という高田の前フリで始まったのが「Sleepwalk」だ。ハタヤのピアノも小憎らしいが、高田のスティールギターも小憎らしい小粋さだ。

「細野さんに褒められた」という「Take It Away, Leon」では、高田はスティールギターを弾きながら軽やかに歌う。その洗練された軽快さは細野バンドで修行を積んだ賜物だろう。そして、渡邊のサックスが鳴り響く「思惑」は、一転してソウルフルなサウンドと日本的叙情が融け合ったメロウネスがたまらない。そこから再びバクバクドキンを招いて「バックビート・マドモアゼル」で景気よくシメ。アンコールはゲストが全員参加して「文違い」が演奏されたが、レコーディングでTin Panに参加してもらった時の裏話を曲中に交えながら、余韻たっぷりに長いアウトロを演奏した。

『ナイトライダーズ・ブルース』を中心に、過去の曲やカヴァーも織り交ぜての2時間半。歌や演奏の素晴らしさもさることながら、観客の懐にすっと入っていく高田のMCも小気味良い。ミュージシャンとしての成長ぶり、そして、現在の充実ぶりが伝わるコンサートだった。「バックビート・マドモアゼル」を演奏する時、「これは音楽の旅は終わらないっていう歌でもあるんです」と高田は言っていたが、これからの旅の行方が楽しみだ。

文:村尾泰郎
撮影:沼田学



■ オフィシャルサイト
http://www.tone.jp/artists/takadaren

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