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NakamuraEmi【NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4〜Release Tour〜】2017.6.1 東京LIQUIDROOMライヴ・レポート

NakamuraEmi【NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4〜Release Tour〜】2017.6.1 東京LIQUIDROOMライヴ・レポート

June 7, 2017 19:00

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TVアニメ『笑ゥせぇるすまんNEW』のオープニングテーマで話題を呼んだ NakamuraEmiが、今年3月8日にリリースしたメジャー2ndアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4』を引っさげ【NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4〜Release Tour〜】を開催。Sold Outで幕を開けた横浜BAYSISを含む7公演はNakamuraのプロデューサーでありギタリストのカワムラヒロシと2人バージョン。5月26日の福岡DRUM Be-1からツアーファイナルのこの日、6月1日東京LIQUIDROOMまでの4公演はバンドバージョンで繰り広げられた。

やはりSold OutのLIQUIDROOM。フロアからドリンクカウンターまで人の波で溢れかえっている。注目度の高さと共に、彼女が多くの人に愛されていることがわかる。照明が消えたと同時に響き渡る大歓声。バンドメンバーのカワムラヒロシ(Gt)、豊福勝幸(Ba)TOMO KANNO(Dr)、大塚雄士(Per)に続き、NakamuraEmiも登場。オープニング、”Rebirth”のフロウと彼女にあたるスポットライト、息を飲み聴き入るオーディエンス。バンドの音が足されると一瞬の緊張感から解き放たれたように湧き上がるフロア。

袖が少し膨らんだ女性らしい白いシャツの肩先、ツアー前に切った髪が揺れる。「ファイナルリキッドルームで叫ぶんだ♪今日はありがとー!」歌に乗せたNakamuraの言葉に、オーディエンスもクライマックスのような盛り上がりを見せる。 Nakamuraは『Don’t』のインタビューで、ライヴハウスでのステージングの難しさにも触れていたが、空間を生かした動き、表現力豊かなパフォーマンスと歌声に冒頭から圧倒された。

20170607_0601_0239.jpg女性から見た男性の決意やけじめを歌った“スケボーマン”はやはり男性ファンからの歓声が多い。 Nakamuraがすーっと大きく息を吸い込み歌い出すと、その歓声は静寂へと変わり、歌い終わるとさっきよりも更に大きな歓声が沸き起こった。

「すぅぅぅぅ…すごい景色ですね。」 フロアを埋め尽くすオーディエンスのパワーに圧倒されながらNakamuraは少し声を震わせ、急に小柄で朴訥とした女子へと変わる。気心知れたバンドメンバーの紹介は、本当に仲の良さや互いの信頼関係が伝わり、見ているこちらまで笑顔になる。

このツアー中、色々な人から貰ったアドバイスや意見。時に凹むこともあるけれど、それによって今回のツアーが出来上がると語ると、“大人の言うことを聞け”へ。カワムラの軽快なカッティング、大塚のアグレッシブなパーカッション、ボイスチェンジャーも用いたNakamuraの歌声で、サウンドは豊かな表情を見せる。

次に歌う“晴人”は、本名の中村絵美から現在の英語表記のNakamuraEmiに変える頃に出来た曲であり、今のスタイルを築く第一歩の大切な曲。

20170607_0601_1719.jpgカルメラの辻本美博(sax)とHEY-SMITH のかなす(tro)をゲストに迎え、ツアーファイナルの東京公演限定セッションを披露!豊福のゴリゴリと骨に響くベースとホーンのクールな響きが、なんとも心地よい気だるさを運ぶ。

更に続く“ヒマワリが咲く予定”が、第2回ブックショートアワード大賞作品原作特別製作ショートフィルム 『ユキの異常な体質 / または僕はどれほどお金がほしいか』のエンディングテーマに起用決定。その発表に大きな拍手が贈られた。この曲で大塚は、Nakamuraの呼吸を見ながら機微に触れるように紙を破ったりクシャクシャと丸めたり。歌詞を「音」として見事に表現している。

昨年9月、初のハワイ一人旅をしたNakamura。英語が出来ないがゆえに起こった珍エピソードを語るとフロアも爆笑。実際ハワイに持っていったオリンパスOM-1を肩から掛けオーシャンドラムを片手に持つと、カワムラからすかさず「どこに行く人なのか、まるで分からない」とツッコミが。再びフロアに笑いが起きるが、一呼吸おくと、まるで音源を完全再現するようなNakamuraの足踏み、ウィンドチャイムのキラキラした音で曲が始まる。そんな音たちを聴いていたら、NakamuraがオリンパスOM-1で録ったハワイの写真を、メンバーが譜面台に置いてレコーディングに臨んでくれたエピソード思い出した。(『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4』インタビューより)あの時は本気で涙が出そうになった。Nakamuraが見た風景をメンバーが共有し、その風景を音として今、オーディエンスと共有している。再び目頭が熱くなる。

「『笑ゥせぇるすまん』を知っている世代が沢山いるのかなと思いますけれど(笑)。」笑顔でフロアを見回すNakamura。TVアニメ「笑ゥせぇるすまんNEW」のオープニングテーマとして書きおろした”Don’t”。89年にスタートしたアニメが強烈な印象だったために自分には向かないと、お断りをしていたエピソードを語り始めた。しかしディレクターの熱意を受け脚本を読んだところ、作品が言いたいことと自分が伝えたいことに共通点を見出し、書きおろしとなった。…と、ここでまさかの喪黒福造の真似で、曲紹介をするNakamura。途中「似てねーよ!」というカワムラのツッコミにもめげずやり切る!やったぞ、MoguroEmi!(笑)そんな笑いもつかの間、カワムラのギターが印象的なイントロを鳴らすと、完成度の高さに驚いた。

20170607_0601_2229.jpgこの曲のインタビューでNakamuraは「ライヴで曲を構築していくタイプなので、自分の中ではまだ完成している感じがなくて。 お客さんがいるライヴで何度も歌って完成していく。」と語っていた。…が、ツアーファイナルのこの日、完全なるひとつの完成形を見た気がした。堂々とした歌声、いつものミニマルなNamamuraサウンドには新鮮な音の重なり、それらすべてがエッジの効いたグルーヴとしてフロアのテンションを上げる。熱気を帯びたステージには、マリンバ奏者の加納りながゲストに登場。この日はグロッケンにて参加。Namamuraが初めてカワムラと共作した“ボブ・ディラン”。

20170607_0601_0559.jpgグロッケンの美しい音色と KANNOのブラシは、Nakamuraの見た風景に寄り添うように優しく温かい。「メジャーデビューして、一年少し経ちました。」インディーズ時代、すべて自分たちで行っていたツアーの準備や用意。それがメジャーになり音楽だけに集中出来る環境が生まれた。「メジャーデビューする前は、デビューが怖くてしょうがなくて、“不安だな、怖いな“という風に書いていた歌詞があったんですけど、それがメジャーデビューして半年後に全部書き変わりました。今、家族みたいなチームに囲まれて、ずっと支えてくれているバンドメンバーに支えられて、こうやって沢山のお客様に出会わせて頂いて出来た曲があるので次はそれを歌います。“メジャーデビュー“という曲を…。」神妙な口調でそう言うと、メンバーのクラップはオーディエンスへ広がり、Nakamuraの歌声はまるで自分を戒め、決意をぶつけるかのように力強く響く。筆者の前にあるミキサーエリアに見えるのは、彼女を支え一緒に戦ってきたスタッフやマネージャーの背中。彼らは鳴り止まぬ拍手と歓声をどういう気持ちで聞いていたのだろう。Nakamuraの歌とバンドのサウンド、オーディエンスの歌声が一体となった “YAMABIKO”で熱狂の中、本編は終了した。


「ワンツースリーフォー!」涙を拭って退場したNakamuraとメンバーがアンコールで再び登場すると、 “モチベーション”のグルーヴ感溢れるカウントとファンキーなサウンドは再びフロアに熱狂をもたらした。

「本当に皆様、沢山の方が平日の中こうやって集まってくださりありがとうございました。」 照明スタッフにフロアの照明をつけるようお願いし、オーディエンスの顔を見回しながら改めて感謝を述べた。この日出演したゲスト全員を呼び込むと「これからまた沢山色々な場所に行けるよう、私も頑張っていきます。私の生活を書いた曲ばっかりではありますが、その自分の悩んだことの言葉がどこか皆さんの生活に寄り添える部分があったら良いなと思って、これからも色々な経験をして曲を作っていきたいと思いますので、よかったら応援をよろしくお願いいたします!今日は本当にどうもありがとうございました。」と挨拶。最後は豪華ゲスト陣も加わった“女子達”で【NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4〜Release Tour〜】の幕が閉じた。

今回触れていない“I”や“使命”、“めしあがれ”を含めた全曲、今まで以上に歌声の繊細さや大胆さ、ユニークさなど色とりどりの表情を感じた。更に彼女の歌声とバンドの音、オーディエンスの大歓声が一体となる瞬間を何度となく感じ、それに胸を熱くしたのはきっと筆者だけではないはずだ。つまりは最高のステージだった。

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Photo by 岩澤高雄
text:秋山昌未



□ セットリスト
M1. Rebirth
M2. I
M3. スケボーマン
M4. 使命
M5. 大人の言うことを聞け
M6. 晴人 with sax辻本美博(カルメラ)and tromboneかなす(HEY-SMITH)
M7. ヒマワリが咲く予定
M8. ハワイと日本
M9. Don’t
M10. ボブ・ディラン with grockenshipel加納りな
M11. めしあがれ
M12. メジャーデビュー
M13. YAMABIKO
・Encore
En1. モチベーション
En2. 女子達 with sax辻本美博(カルメラ)and tromboneかなす(HEY-SMITH)and grockenshipel加納りな


■ NakamuraEmi Official HP
http://www.office-augusta.com/nakamuraemi/

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