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米津玄師 "2016 TOUR / 音楽隊" TOUR FINALライブレポート

February 13, 2016 17:00

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米津玄師 "2016 TOUR / 音楽隊" TOUR FINALライブレポート

米津玄師が、2月12日に東京・豊洲PITにてライブツアー「米津玄師 2016 LIVE TOUR / 音楽隊」のファイナル公演を行った。

昨年10月にオリコンチャート1位となった3rdアルバム『Bremen』をリリースし、アーティストとして大きな飛躍を果たした米津。今回のツアーは、そこで彼が掴んだものを様々な場所のお客さんとわかちあうような旅になったはずだ。その最終公演だけに、彼の現時点での集大成を見せるような、とても感動的な一夜となった。

開演時間になると、暗転し、ステージ前を覆う薄い紗幕に動物たちを描いた米津玄師のイラストが影絵となって映し出される。そして幕が開くと同時にライブは「ウィルオウィスプ」からスタート。童話「ブレーメンの音楽隊」をモチーフにしたアルバムの世界に誘われるような幕開けだ。

「ようこそ音楽隊へ!」と米津が告げ、エレクトロニックな音色を配した「アンビリーバーズ」へ。バンドメンバーは中島宏(Gt)、須藤優(Ba)、堀正輝(Dr)という初ライブから変わらぬ編成。しかし曲によっては中島や須藤が、もしくは米津自身が鍵盤を弾くなど、その演奏スタイルは様々だ。印象的だったのは、奏でられる一つ一つの音が、とても力強く肉体的なものになっていたこと。ツアーのたびに目覚ましくパフォーマンスが進化している。

激しいデジタルシーケンスとバンドサウンドが融け合う「再上映」や、「一緒に!」と米津が呼びかけ会場中が声をあわせた「フローライト」、あたたかな色の照明に包まれ優しいメロディを高らかに歌い上げた「メトロノーム」など、前半は『Bremen』の収録曲を続けざまに披露していく展開だ。

「アイネクライネ」を終え、MCではツアー恒例の中島宏によるご当地トークで会場を和ませる。続いて、米津は「実は去年の冬までここらへんに住んでいて、この豊洲PITの前も毎日のようにランニングで走ってた。新しいのか古いのかわからないような、不思議な街なんだよね」と語り、夜の街を舞台にした旅を描くアルバムの原風景に、豊洲周辺の光景があったことを明かしていた。

後半は「速い曲やるけど、ついてこれるかな!?」と客を煽り、「ゴーゴー幽霊船」から「パンダヒーロー」とアグレッシブな曲へ。続く「Undercover」「Neon Sign」では深い低音のビートに乗せて迫力ある歌声を響かせる。

そして、クライマックスとなったのは本編のラスト2曲だった。「次やる曲はあまりに個人的な曲で、自分の暗い部分や怒りを凝縮してできた曲だから、アルバムに入れるかどうか迷ったんだけど……。でも、それも自分だし、歌うべきだと思った」と語った「ホープランド」では、後半でどんどん熱量をあげ、歌声は最後にまるで身体の底から絞り出した叫び声のようなものに転じる。ゾクゾクするような瞬間だった。そして一転、「Blue Jasmine」はまぶしい光に包まれアコースティックギターを抱えて幸福感ある歌でステージを締めくくった。

アンコールに応え、ファンの寄せ書きが描かれた横断幕と共に再びステージに立った米津は「Flowerwall」を披露する。そして、『Bremen』というアルバムで何を目指したのか、その曲を各地で披露するツアーを経てどんな感慨を抱いたのか、集まったお客さん全員に丁寧に語りかけた。

「どうなるかわからないような未来に向かって歩いていかないといけないのは、ここにいる一人一人も、みんな同じだと思う。大事なのは辿り着くことじゃなくて、その途中で何を見出すか。『ブレーメンの音楽隊』というお話は、自分たちにちょうどいい幸せを見つけて、その中で生きていきましたという風に終わる。物語としては微妙な終わり方かもしれないけれど、普遍的な話だと思ったし、美しいと思った。そういうものを作りたいと思ったんだよね」

そして、この先の未来に向けての表現者としての決意も、誠実な言葉で告げていた。

「昔から、素晴らしい音楽や映画や小説に触れた時には、自分がもう少しだけ生きられるような、ものの見方や感じ方が少しだけ変わるような気がしていて。自分の音楽もそういうものでありたいと思ってた。俺は死ぬまで音楽をやっていくと思うんだけれど、曲を作るたび、歌うたびに、それに触れたみんなが変わっていって、そこから自分もどんどん変わっていく。そうやって素晴らしいところ、美しいところにみんなで向かっていくことができたらなと思います」

最後に歌ったのは「こころにくだもの」。シンプルな旋律にのせて「りんご レモン ぶどう メロン」と歌うサビの部分は、最後には会場中のお客さんが声をあわせての合唱となった。

集まった人たちにとっても、彼自身にとっても、記憶に深く刻まれた一夜となっただろう。今の時代に、どのようにして聴き手の心を深く揺さぶる普遍的な力を持った音楽を届けるのか。そういう本質的な面でも大きな成長を遂げてきた米津玄師の真価を示すようなステージだった。

文:柴 那典(しば・とものり)
撮影:中野敬久



□ セットリスト
01. ウィルオウィスプ
02. アンビリーバーズ
03. 再上映
04. フローライト
05. ミラージュソング
06. 雨の街路に夜光蟲
07. メトロノーム
08. アイネクライネ
09. ゴーゴー幽霊船
10. パンダヒーロー
11. Undercover
12. Neon Sign
13. ドーナツホール
14. ホープランド
15. Blue Jasmine

EN1. Flowerwall
EN2. こころにくだもの


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