株式会社雷銀映像 ディレクター佐藤正浩さん・株式会社magokorofactory結城真司さんインタビュー
December 25, 2025 10:00
インタビュー
ー 撮影で印象深いエピソードや衝撃的な出来事があれば教えてください。
佐藤:実はそこまでエピソードとして印象深かったり衝撃的なことって起こらないんです。僕らは平穏無事に撮影を終えることが当たり前であり、ある種の成功ですから。ただアイドルやバンドメンバーなど、演者が本番中に体調を崩してあとの構成が変わることはあります。そういう時はチームや運営サイドとの連携が大切になってきますね。
結城:本番中に練習不足が原因で、泣いて袖に引っ込んじゃう人もいましたしね。
佐藤:撮る側のトラブルというより、演者のトラブルはたまにあるね。
結城:まぁドラマや映画、CMなどはエンタメだと感じますが、ライブは比較的ドキュメンタリーに近いんです。そういうトラブルもそうだし時間軸がずらせない中で、あるものをどうやってうまく切り取っていくかが勝負になってきます。予期せぬことは報道でもドキュメンタリーでも結構あって、そういう時にどう対処するかはライブも一緒だから、何かあった時には楽しむ!というか、楽しんじゃうしかないんですよね(笑)。僕たちは撮らせてもらっている立場なので、もし演者のひとりがステージからいなくなっても、作品を仕上げるために他のメンバーをどう撮るか頭をフル回転にして考えて楽しむ!
ー 楽しむという発想はすごいです!ではトラブルでなくライブの内容がとても良い時、素で楽しんでしまうことはありませんか?
結城:佐藤さん結構ノリノリで撮ってるよね。
佐藤:カメラがブレない程度にね(笑)。でも結城さんは全体を観ないといけないので、もう少し冷静だよね。
結城:ほぼ変わらないね。まぁ指示を出す側の人たちはなるべくフラットな状態が良いと思うんですよ。ディレクターさんは感情移入して良いと思ますが。
ー では結城さんが撮影監督として大切にしていることはフラットな感覚ですか?
結城:それは普通というか、そこがベースですね。一番大切にしているのは、アーティスト本人とお客さんです。例えば堂珍さんで言えば本人の魅力もそうですし、堂珍さんを支える周りのミュージシャンがどうやってカメラに収まって、それをどうやってファンの方々へ届けるかが一番大切かなと思っています。例えばライブ会場のお客さんが普通では見えない部分を見せるのもひとつです。お客さんは大抵正面から観ていますが、カメラの台数を増やしたり場所を考えておくと、例えば後ろから見えたり楽器越しに見えたり、もっと言えば楽器の手元が見えたり。
ー そういうのはすごく嬉しいですよね!
結城:ですよね。そういうものが魅力に繋がるんじゃないかと思うんです。
ー 佐藤さんが大切にしていくことはなんでしょうか?
佐藤:撮影はカメラマンを含めて照明その他色々な担当がいるチームなので、ディレクターのエゴだけで決めつけすぎないのが良いのかなと思っています。カメラマンも何人かいるとそれぞれ個性があるので、その余地を与える……ではないですが、その人の良いところが発揮出来ればと思っています。多分他の人たちは僕には持ってないものを持っているので、そこで僕が言い過ぎてしまうとその良さが出てこないので、そういうところはあまり演出しすぎないよう意識しています。結城さんがライブはドキュメンタリーと言っていましたが、まさにそういう部分もあるんで撮っている人がどうライブに入り込んで撮っているかとか、その人のセンスみたいなところを僕は重視したいタイプのディレクターなので、その温度感は大切にしています。
佐藤正浩さん
ー それぞれやってみたい撮影や監督作品、“萌える”映像技術などを教えてください。
佐藤:僕は結構自然の中で撮りたいかな。(窓の外の夕焼けを見ながら)このゴールデンアワーと言われる、こういう時間の外って綺麗なんですよね。さっきまでは西日が眩しかったのに、空が落ちてくると空が綺麗なグラデーションになって。それってやはり人工的照明だと作りにくい部分なので、本当はこういう時間帯だけを何日もかけて撮影するのが良いんですが、なかなかそう時間と予算をかけられる案件がね(笑)
ー そうですよね(笑)
佐藤:昔の映画の風待ちではないですが、そういうのが出来たら楽しいですね。
結城:僕は先程の、大切に考えている部分に繋がるんですが、お客さんの目線で見えないものを見せることですかね。会場に行った人も「こんな風にみんな演奏してるんだ」とか「ドラムの人やキーボードの人、アーティストはこういう目線で見えているんだ」という発見があると楽しいと思いますし。今はマイクロドローンもありますが、それがより安全でよりコンパクトで、音も小さいものが出来たら今より映像の幅は広がるので、それこそが“萌え”に繋がりますし、撮る選択肢が増えたら積極的に取り入れたいですね。
ー 今はまだドローンでも音がしますしね。
結城:バラードでブーンとか言ってると、何だよおい!ってなりますよね(笑)。ただ画は良いじゃないですか。俯瞰に行ってみたりローアングルで行ってみたりお客さんの中から近づいていったり。そうやって会場にいる人の目線でも決して見えないものを見せられるというのは僕たちの特権であり役目であり。そういうものを共有できたら嬉しいです。
ー 今、映像の分野でもAIをSNSなどで見かけることが多くなりましたが、AI映像についてどうお考えでしょうか?
佐藤:良いとは思いますけどね。映像ってとても手間がかかるので、それが気楽に誰でも作れるようになっている。頭の中で思い描いているものをアウトプットする一歩としては良いと思っています。それと撮影技術においても、例えば顔認証のようなものが取り込まれることでこちらもより良い撮影が出来る部分もあるので、助かりますしね。
ー そういう意味ではAIに対してネガティブな印象は持たれていないんですね。
佐藤:僕は全然ネガティブには捉えていないです。
結城:僕もかなりポジティブに捉えています。AIの補正技術は結構優秀ですよね。勿論出来る時と出来ない時はありますが、うまくいったらかなり修正してもらえるので、のちのち安心して撮影が出来るんですよね。YouTubeとかでAIを使ったギャグみたいな映像が上がっているのを観ますが、めちゃくちゃ面白いですもんね。
佐藤:それにいくらAIが発達しても、人間しか出来ないこともありますから。
ー では、これから映像の世界に飛び込もうとする人たちへアドバイスやメッセージをお願いします。
佐藤:映像業界って昔から酷い業界って言われていて……。
結城:いきなり(笑)
佐藤:酷いって言っちゃだめか(笑)。ハードワークが求められる業界なので、入った人がすぐに辞めてしまうのも現実ではあります。ただ5年、10年やっていると見えてくる世界もまた変わってきますし、もし最初に飛び込んだ場所が悪かったとしても諦めないで欲しいですね。色々な会社含めて色々な仲間たちいるので、そういう会社や仲間を見つけると自分が思い描いているものを長く追求出来ると思うので、諦めずに7、8年スパンくらいの長い目で見ながらやって欲しいですね。
結城:今の時代、誰でも映像を撮れて編集出来る世の中なので、映像をやってみたいという若い人たちがいるのだったら、この世界に飛び込む、飛び込まないを抜きにして映像を撮ってみたら良いんじゃないかと思います。佐藤さんではないですが、弊社もかなりハードで(笑)。例えば朝セッティングに入って、昼までにアップして午後にはリハーサルに入らなければいけないとなると食事する時間がずれ込むこともあるし。勿論それが毎日というわけではないですがそういうハードな時もあるので、一概にこの世界に飛び込んでとにかく頑張れみたいな話でなく、映像が好きだったら自分で動画サイトやSNSにアップしてみたら、何か面白いことが発見出来るかもしれないので、まずはそういう部分からチャレンジして欲しいです。
ー ありがとうございました。
Interview&Photo by 秋山雅美(@ps_masayan)
■ 株式会社 雷銀映像
https://www.raigin.co.jp/
■ 株式会社 magokorofactory
https://magokorofactory.com/