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半﨑美子、アルバム『うた弁3』インタビュー。デビュー5周年、インディーズ時代からずっと走り続け立ち止まった先に見えたものとは。

半﨑美子、アルバム『うた弁3』インタビュー。デビュー5周年、インディーズ時代からずっと走り続け立ち止まった先に見えたものとは。

August 30, 2022 18:00

半崎美子

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ー そういう意味でいうと、“たった一人の味方に会えた”という歌詞で始まる「道の上で」もまさにそうなのかなと感じました。今の半﨑さんの味方は一人じゃないし、ずっと応援してくれたお母様は勿論ですが、先程も誰も足を止めないショッピングセンターのイベントで一人足を止めてくれたというお話があったように、足を止めてくれた一人がまた一人、また一人ってどんどん増えていったじゃないですか。

ええ。


ー それはファンの方だったり、例えばマネージャーさんだったり、スタッフの方だったり、もしかしたらこうやってインタビューさせていただいている私なんかもその一人になれたら嬉しいななんて思いつつ。

いや、本当まさにそうですよね。この曲はファンクラブの配信イベントで初めて歌ったんですが、明るい元気な曲なのに何故か泣けてきたことを覚えています。多分、自分自身とすごくリンクする部分が大きいと思います。


ー 明るい元気な曲なのに何故か泣けてきたというの、すごく分かります!それにここまでのバンドサウンドって今作では珍しいので、この曲もライブで早く聴きたいです!

嬉しい!サウンドとしては割とカラッとしてるんですが、歌詞としては結構どっしりとしたメッセージがありますよね。


ー そうそう。だからこの曲がもしバラードだったらあっという間に涙腺崩壊するし(笑)全然違うイメージになりますよね。

確かに!あ、何かバラードアレンジにしたものも歌ってみたくなりました(笑)。


ー 是非聴きたいです!それと「タンチョウの夢」のような楽曲も珍しいなと思いました。途中の、“ヤサエ・エンヤン”というのは、ソーラン節ですか?でも節回しは全く違いますもんね。

確かにソーラン節にもありますが、節回しは違いますね。“ヤサエ・エンヤン”というのは元々はニシンの漁の掛け声だったそうですよ。実は私も歌いながら何となく出てきたのでそのまま歌詞として入れたんですが、ちょうど昨日北海道のキャンペーンだったんですが、北海道の人はやっぱり分かるみたい。ラジオで放送した時もこの曲への反応がありました。


ー あぁなるほど。民謡感を全面に出すのではなく原風景のようなイメージだし情緒があってとても素敵です。

ありがとうございます!釧路にはタンチョウヅル(以下:タンチョウ)が生息していることもあり、この曲は北海道ツアーの釧路公演で初披露したんですが、コンサート前にタンチョウにご挨拶へ行きました!


ー すごい!こういう曲が生まれたアイデアの起点を教えてください。

正直言うと私も分からないというか(笑)。


ー 正直すぎ!

でも何ていうのかな……和を感じるこのメロディーが自然と生まれて。以前からタンチョウに魅せられてはいたけれど、特に歌にしようと考えことはなかったんです。ただこのメロディーを伴ってタンチョウの風景が浮かんできたんですよね。


ー そういえばこの曲のアレンジを担当されたミトカツユキさんも北海道出身でしたよね。しかもはこの曲と「帰途」はミトさんも作曲段階から携わったとか。

そうです、そうです。同じ北海道出身ということは勿論ですが、根底に流れているソウルみたいなものがすごくリンクして。特に「タンチョウの夢」は、あまりディスカッションなく自然に出来上がりました。「帰途」に関しては、元々作っていたサビに合わせてピアノを弾いてもらいながら肉付けしていきました。この曲は自分の故郷で初披露したいなという気持ちがあり、北海道ツアー最終日の札幌で初めて歌いました。この歌の中の故郷は、生まれた場所という意味だけではなく、例えばその人にとって懐かしい場所とか、私が私でいられる場所とか。


ー あぁ、なるほど。

私の場合、それはステージでもあるんです。それこそ8ヶ月くらいコンサートが止まっていてやっと京都劇場でコンサートが再開した時は、もしかしたらこの「帰途」に近い感情だったのかもしれません。歌詞の“長い旅から帰ってきた 私が私でいられる場所”。故郷と言っても色々なイメージが広がりますね。


ー 確かに私が私でいられる場所って生まれ故郷とは限らないですね。あとサウンドアレンジが面白いですね。

それがミトさんマジックというか、ミトさんならではのアレンジですね。この曲もそうですが今回の作品も割と3拍子の曲が多くて、それもまたミトさんのアレンジにマッチしていて。


ー きっと3拍子のリズムが半﨑さんに合っているんでしょうね。

そうなのかもしれません。


ー 半﨑さんの曲でバンドサウンドは今までもありましたが、アコギのソロはあってもエレキのソロ、しかも結構激しめのものは聴いたことなかったです。でもこの曲もやはり好きです!

私もこの曲好きなんですよ!確かにこういう曲は今までなかったですね、エレキが歪んでいたり。懐かしさもあるけど朗らかな感じもあって、決してノスタルジックなだけではないアレンジの魅力を感じます。それが歌詞と相まってすごくバランス良いんですよね。


ー ライブアレンジみたいな雰囲気も感じました。

実際にライブセッションみたいな感じでレコーディングしたので、その空気感が音に表れているんだと思います。そういう意味では「足並み」もライブセッションのように、クリックを聴かずにみんなの呼吸を合わせて録りました。レコーディングからそれぞれの想いが一つになる瞬間みたいなものを感じましたね。「足並み」は武部聡志さんにアレンジしていただいたんですが、私の拙いピアノデモが素晴らしいアレンジで返ってきて、そこからみんなで一斉にレコーディングして。「足並み」ってブレイクが結構あるじゃないですか。


ー ええ。

あの辺の息の合い方はすごく絶妙ですし本当にプロフェッショナルな方々なので、すごいものを見せていただいたというのが率直な感想で。そのエネルギーがやはり作品に出ているって仕上がった音源を聴いて改めて感じましたね。


ー それと12品目の「あとがき」。一瞬ドキッとするくらいストレートに最期と向き合った歌詞だと思いました。でも決していたずらに煽るような表現ではないのが心に刺さりました。

亡くなった方やこれから最期を迎える方との繋がりという意味では「私に託して」と少し近い気がします。冒頭の、“あとは任せて もう心配ない”という言葉がメロディーを伴って最初に出てきて、そのま書き上げました。亡くなった方もある意味では立ち止まっていると思いますし、そういう方たちから今自分はどう生きればいいのか教えてもらったり、支えてもらっている気がします。「私に託して」はお墓参りに行った後、暫くしてから書いたんですが、この「あとがき」は特に何かきっかけがあったわけではないんです。ただ絶対にこのアルバムの最後にと考えていました。


ー 年齢を重ねると特にこういう別れに想うことって色々出てきますよね。

そうなんですよね。最期に伝えたい言葉って、“ありがとう”以外にないんじゃないかって。今は世の中で様々な争い事が起きたり辛辣な言葉が溢れたりしますが、相手を攻撃するような言葉ってそういう時には出てこないんじゃないかな。つまりそれが全てだと思っているし、そういう言葉がもし出てくるとしたら、自分が明日も明後日もずっと生きていられるって思えているからかもしれない。けれど改めて今日という日1日1日、今を生きることを思った時に出てくる言葉はこれ以外にないと思っています。


ー アルバムを携えつつ、5周年の集大成のツアー「うた弁3発売記念~5周年集大成ツアー2022 」(以下:集大成ツアー)が9月からスタートしますね。集大成ツアーとしては初めて故郷でファイナルを迎えるとか。

そうなんですよ。勿論他のコンサートでは各地へ歌いに行きましたが、この集大成ツアーは元々東京でしか開催していなくて、2019年に初めて大阪でも開催したんです。なので北海道公演自体も初めてですし、ましてや故郷でファイナルを迎えられるのはとても楽しみで。この集大成ツアーでは今回も半崎信朗さんに映像を作っていただき、オープニングからエンディングまで一つの物語とアニメーションでお届けする予定です。楽曲は『うた弁3』を中心にお届けしますが、5周年というところにスポットを当てるとデビュー後やインディーズ時代の楽曲含めてセットリストを絞る作業をしています。このままいくと10時間ぐらいになっちゃいそうで……(笑)。


ー それはすごい(笑)。今作は勿論一番聴きたいところではありますが、個人的には「潮風」や「フェイク」が結構好きで。

えー!!!それは意外!でも「潮風」良いなぁ……これで10時間以上になることが決定しそうで怖い(笑)。


ー アハハ!

でも無事に開催してみなさんと早くお会いしたいです。


ー ありがとうございました。楽しみにしています!


インタビュアー:秋山雅美(@ps_masayan


■ 半崎美子 オフィシャルHP
https://hanzakiyoshiko.com/

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