POPSCENE - ポップシーン
POPSCENE - ポップシーン
半﨑美子、デビュー5周年記念シングル「蜉蝣のうた」インタビュー。変わらぬファンへの想いと、楽曲制作の森山直太朗氏の熱意から生まれた新たな一面。

半﨑美子、デビュー5周年記念シングル「蜉蝣のうた」インタビュー。変わらぬファンへの想いと、楽曲制作の森山直太朗氏の熱意から生まれた新たな一面。

May 13, 2022 18:00

半崎美子

0
シェア LINE

ー 場所によって歌い出しの言葉2音目くらいまでにかかるエモーショナルな発声とか。

あぁ!それって直太朗さんぽいですよね。


ー ええ。半﨑さんの歌で今までこういう表現はなかったですが、決して真似にはなっていないし、同じく新鮮だったのは語尾を短く発音することです。

ああ、分かります!今までなかったですね。短い発声も直太朗さんの表現でよくありますが、余白や余韻みたいなものを感じられるので聴く人の想像力を広げてくれるんですよね。そういう部分はこの曲にも必要でした。


ー それと逆に音を伸ばした時にビブラートと感情による声の震えの中間のようなギリギリのラインというか……。

まさにそのとおりなんです!ビブラートもあまり掛け過ぎないとか、押し引きみたいなものの大切さを直太朗さんは言っていました。直太朗さん自身も私の楽曲をすごく沢山聴いて私の歌声に導かれるように書いたとおっしゃってくれたんですが、これまでの歌い方からひとつ外に出たと自分でも感じています。直太朗さんは「是非この歌で冒険してください。」と言ってくれたんです。なのでそこは直太朗さんの意志というか、この楽曲への思いに寄り添う形の歌い方にしたいという想いはありました。


ー 今の想像をさせるという話に繋がるんですが、私はこの歌詞を読んだ時に、主人公が今歌っていること、そして生きることは、後悔からくる自分への戒め、更にそれを甘んじて受ける覚悟が強さに変わったように想像しました。

内省的な部分も感じましたが、私の曲は見えなくても自分の心の中に生きている人や、もう会えなくなった人やへの思いを綴った作品が多いので、そういう私の楽曲や活動にもリンクしながら書いてくれたのかなと思っています。この歌の物語が直太朗さんの中でどういう意味合いを持っているのか直太朗さん自身に詳しくは聞いていないですが、私自身はやっぱりもう会えなくなった大切な人を思いましたね。発声の部分と重なりますが、聴き手に委ねてくれているんだと感じましたし、「私が今も歌ってるのは 我を忘れん為」という歌詞は自分自身に凄く刺さる言葉でした。


ー メロディーもそうですが、歌詞の言い回など直太朗さんらしいんですよね。特に「よしんば」や「忘れん為」という表現。“忘れない”ではなく“忘れん”って。

そうそうそう!“忘れん”という表現はまさに直太朗さんらしい印象的なフレーズですよね。一度、“忘れん”ではなく“忘れえぬ為”にするアイデアも出たんです。でもやっぱりこのままの方が曲の印象を強くしてくれると思って。


ー なるほど。ただトータル的にみるとやっぱり半﨑さんらしいんですよね。

多分そこまでの着地を考えて直太朗さんはこの曲を書いてくださったのかなと思います。私が歌った時に歌って初めて完成するような形で。だから結構ファンの方からも「知らないで聴くと半﨑さんが作った曲だと思いました。」と言われました。


ー そうですよね。例えば「おんなじ夜空の間で」という歌詞は特に半﨑さんらしいというか……。

すごいところに気づきましたね!


ー え?

実はここだけ私が歌詞を直させてもらったんですよ。元々は「おんなじ夜空の真下で」で。


ー あ、“間”という表現が半﨑さんらしかったんだ!

そう!「おんなじ夜空の真下で」というと、私はもう空の上にいる人に向かってるから、自分は真下じゃないんですよね。勿論直太朗さんには直太朗さんの意見もありましたが、自分の思いというか意見をお伝えしたら「それでいいよ。」と言ってくださって。でもすごい!よく気づきましたね。ラジオで「“間”が美子さんらしい」と一人だけ言ってくださったファンの方がいて、“よく分かってくれた!”と思ったんですけが、まさかの二人目です(笑)。


ー いや、自分でもちょっと驚きました(笑)。でも初の楽曲提供曲がこれだけしっくりくるのってすごいです。

多分そこまでの着地を考えて直太朗さんはこの曲を書いてくださったのかなと思います。私が歌った時に歌って初めて完成するような形で。


ー サウンドもすごくシンプルですよね。半﨑さんの歌の他には武部聡志さんのピアノとストリングスだけですか?

オルガンも少し入っているんですが、でも本当にそれだけです。アレンジも色々なものを削ぎ落とす形をイメージしていたし、プリプロの時点でもピアノ1本で行くぐらいの気持ちだったんです。直太朗さんは「僕たちは歌1本で勝負出来るからアカペラでも大丈夫。ピアノひとつギター1本でも声が真ん中にあれば大丈夫。半崎さんもそういうアーティストだと思うから。」と言ってくださったんです。だからこそアカペラでも成り立つシンプルな作りにしてくれて、なおかつ情感はたっぷりな武部さんのアレンジで仕上がりました。


ー 音を削ぎ落としてなお感情を揺さぶられるアレンジと楽曲のクオリティ、中心にある半﨑さんの歌声。この曲をコンサートで聴いたらスタンディングオベーションというか絶対に拍手が鳴りやまないですよね!

実際に新歌舞伎座でこの曲を歌った時にはやっぱりお客様との間に、これまでと違う空気感が生まれてましたね。


ー やっぱり!それは想像ができ得ると言うか、だからこそ早く体感したいです。今回はこの曲の他に既に配信リリースされている「地球へ」、そして新曲の「私に託して」が収録ですが、「私に託して」は初めての弾き語りだったそうで、いかがでしたか?

いや、もう勢いでやりました(笑)。クリックも聴かずレコーディングに臨んで3テイクくらい録ってその中から選びました。そういう空気感みたいなものも含めてパッケージに入れたかったんですよね。


ー 「蜉蝣のうた」は勿論大好きなんですが、この曲はちょっと特別というか、心の中に大切にしまっておきたい曲というか。今の時点では半﨑さんの曲の中でこの曲が一番好きです。

えー、それすごく嬉しい!!だって私の曲をインディーズ時代の作品含めてずっと聴いてくださっているから。


ー もしオリジナルにどんなに沢山の楽器が入って豪華なアレンジを施していようが、その曲をアカペラや弾き語りで聴いた時にも良い曲だと感じられる曲が本当の名曲と思っているんです。この「私に託して」は元々弾き語りですが、そういう名曲の類かなと。

嬉しい!私はキャロル・キングがすごく好きで、この曲の内容もまったく決めていない時点で、どちらかというとそういう雰囲気を出したいというイメージだけはあったんです。でも本当に自然と出てきたので、あまり何にも縛られずに歌えました。ファンの方からもCD発売後に「この曲がすごく好きなのでライブで歌ってください」って言われることが多かったんですよ。先程心の中に大切にしまっておきたい曲とおっしゃってくれましたが、私も似たような感じで。とっておきたいというか…大切にしたい楽曲になりました。


ー 深い愛情を感じる歌詞で、これは勝手な私の解釈ですが「蜉蝣のうた」や「地球へ」に出てくる“あなた側”からのメッセージのようだとも感じました。

そうそう!曲が出来た時に、“この曲って「蜉蝣のうた」と「地球へ」のアンサーソングだな”と思ったんです!


ー ということはその部分を意識せずに作れらたんですか?

そうなんですよ。作り終えてからそう感じて。あと深い愛情と言ってくれたことで、もうひとつ思い出したのは『うた弁』(デビューミニアルバム)に収録している「鮮やかな前途」という曲。『うた弁』の曲ってインディーズの頃に書いた曲が殆どなんですが、この「鮮やかな前途」だけデビューが決まったタイミングで、これからの前途が鮮やかであるようにという思いを込めて書いた曲だったんです。先日新歌舞伎座で久々にその曲をアンコールで歌ったんですが、歌い出しの「どこへ行こうとも変わりはしないさ〜♬」の部分って「私に託して」とほぼ同じなんですよ。


ー あ、本当ですね!

歌っていて一人でびっくりしました(笑)。だけど5年前に作った「鮮やかな前途」と「私に託して」は深さが全然違うんですよね。それは5年を経て積み重ねたものがこの歌に繋がったのかなという気がします。今回、3曲目には弾き語り曲を収録しようとは考えていましたがこの曲が元々あったわけではないので、本当にギリギリで出来たというか、レコード会社やマネージャー含めて何の曲が入るのか誰も知らないみたいな状態で、全員レコーディングで初めて聴いたんですよ(笑)。


ー えーー!

だからこれであっているのか誰も正解分かんない(笑)。

スタッフ:もはや収録するのかも分からない。

<一同爆笑>


ー レコード会社としては、「デモだけでも先に下さい!」って思ったんじゃないですか?

いや、思ったはずです。でも弾き語りの良いところと言っては変ですが、ギリギリまで悩めるというか、自分で好きなように変えられるというか(笑)。だから結構フレッシュな状態で録音しましたね。


ー 先ほどデビュー当時は野性味溢れていたと言われていましたが、5年経ってもスタッフの人がレコーディングで初めて楽曲を知るって結構野性味溢れている気が(笑)。

アハハ!5年経って何も変わってない(笑)。まだ全然走り回ってる感じ。


ー いや、半﨑さんのそういうところが好きです(笑)。でも今作は弾き語りや楽曲提供曲など初めてのことが続きましたが、メジャーデビューしてから半﨑さん自身がジャケットに登場するのも初めてですよね。陽の光に透けるストールや揺らめきや半﨑さんの表情など歌の世界にぴったりでしたが、ストールがたゆたう感じを出すのって結構大変だったんじゃないですか?

かなり大変でした。撮影が2月、しかも朝の5時くらいでもうみんな震えながら撮りました。障害物が何もない小高い山みたいところで吹きさらしの強風。人工的に風を起こさなくても良いというか、逆に風が強過ぎちゃって「ふわっと見えるように持ってください。」って言われるんだけど、すごくしっかり持たないとストールが飛ばされちゃうんですよね。でも「指をもっとふんわりしてください。」って言われて(笑)。でもおかげでストールで蜉蝣の特徴的な白く透明な羽や、命の儚さみたいなものを表現出来たと思いますし、光の感じもちょっと祈りに満ちているというか。


ー 本当に素敵なジャケットです。それと先ほど新歌舞伎座の話が出ましたが、あの公演が5周年の冠を付けた初の公演でしたね。

そうです。新歌舞伎座という会場でのコンサートも初めてだったので、大阪感を強調したら楽曲構成にしてみました。ただ最後はタガが外れたように号泣してしまいましたが(笑)。5周年の振り返りもそうですが、アンコールで「私に託して」と「鮮やかな前途」を歌った時に……何て言うんですかね、ちょっと心の荷物を置いてデビューした当時に近い自分に戻ると、喋っていても自然と涙が出てきちゃったんですよね。デビュー前、ライブを手伝ってくれた方とか、チラシ配りを一生懸命手伝ってくれた小学生の女の子のことなどの思い出話をしたんです。やっぱり自分の生き甲斐や喜びはこの道のりにあるんだなとすごく感じました。だからこそこれまで出会ってくれた方たちと分かち合っていきたいんですよね。子供とかも何か出来た時に親に見てもらおうとするじゃないですか。「見て見て!」って。


ー ええ。

それって単純に褒めて欲しいだけじゃなくて、喜びを分かち合いたいからだと思うんですよね。私のデビュー当時にあれだけの方たちが喜んで大泣きしてくれたことがまさにそれと一緒だと思うし、一歩一歩つけていく足跡に対して一緒に伴走してくれて色々なことを喜び合ったり、時には悲しみ合ったりしながら歩いていくその道のりにこそ、自分は生きがいや喜びを感じるので、5周年を過ぎて、これから先もそういう形で皆さんと歩み続けたいと思います。


ー ありがとうございました!


インタビュアー:秋山雅美(@ps_masayan


■ 半崎美子 オフィシャルHP
https://hanzakiyoshiko.com/

Information

Release

半崎美子
「蜉蝣のうた」

2022年4月6日発売

-収録曲-

1. 蜉蝣のうた
2. 地球へ
3. 私に託して
4. 地球へ 合唱 ver.

特典付きCDショップ情報:https://lnk.to/kagerou_cd

蜉蝣のうた

「地球へ」合唱譜付き

CRCP-10477 / ¥1,200(税抜価格 ¥1,091)

YouTube

Music Streaming