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帰りたくても帰れなかった......決意の上京を支えた音楽達。半崎美子、初のカヴァーアルバム『うた弁COVER』インタビュー

帰りたくても帰れなかった......決意の上京を支えた音楽達。半崎美子、初のカヴァーアルバム『うた弁COVER』インタビュー

December 8, 2020 19:00

半崎美子

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北海道から上京して今年20周年を迎える半崎美子が初のカヴァーアルバム『うた弁COVER』を12月9日にリリース。<故郷>や<青春>をテーマにした今作は中島みゆきの「ホームにて」から始まる。同郷の半崎だからこそ、更に家出同然で上京した半崎だからこそ帰郷への想いや歌詞の情景を見事に歌い上げている。更に永六輔氏×中村八大氏の、いわゆる<68コンビ>の名曲「黄昏のビギン」や松田聖子の「SWEET MEMORIES」、唱歌「故郷」のなど豊かなバリエーションの今作へどういう想いを込めたか。また、9月12日に配信リリースされた「特別な日常」や、【半﨑美子上京20年記念配信ライブ〜感謝の念 赤坂BLITZ最終章!!!】への想いも伺った。


ー 少し遡りますが、今年9月に配信リリースされた「特別な日常」ですが、優しくて、それでいて包容力があって、まさに半崎さんそのものだなと感じました。

うわぁ、嬉しいです!


ー この曲は、イオン北海道のCMテーマソングとして書き下ろされた曲ですが、実際にイオン北海道の店舗や従業員の方々、生産者のもとを訪ねて、対話しながら作り上げたとか。

そうなんです。自分はショッピングモールでお客さんと対話をして想いを受け取ってきました。その中にはファンの方だけでなく、従業員の方々…例えばクリーニングスタッフの方や洋服売り場の方、警備員の方などがCDを買いに来てくださったり、お休みの日にご夫婦で来てくださったりという交流もあったんです。ただ実際にインタビューさせて頂くことはなかったので、今回のお話を頂いた時に改めて生産者含めて、イオン北海道のスタッフの方々へお話を伺ってきました。最初、どの立場で曲を書いていいのか悩んだんです。自分はイオンのお客さんでもあるけれど、ステージで活動させて頂く立場でもあるし…。やっぱり現場の人たちの声を聞けたことはすごく力になりました。何て言うか、色々なピースがカチッとはまった感じ。当たり前と思っていた日常が奪われている今、<日常>こそが特別なんだと色々な方が感じているはずです。そしてその日常を作っているのはまさにイオンさんだなって。


ー 特にまだゴールが見えないこの状況下、日常のありがたさを感じることは多々あります。

人間って、本当に普通の日常が戻ると色々なことを忘れてしまいがちじゃないですか(笑)。


ー 何もない日常を退屈だと思ってしまったり(笑)。

そうそう。この曲はイオン北海道さんのCMとしてオンエアされているだけでなく、店内でも流れているんです。だからこの日常こそが特別なんだと改めて再確認したり、現在のこういう状況が過ぎ去って以前のような日常が戻った時も、この曲で今ある日常がすごく大切だと思うきっかけになれば嬉しいですね。


ー この曲がリリースされた少し前の9月5日(土)、【半﨑美子上京20年記念配信ライブ〜感謝の念 赤坂BLITZ最終章!!!】を開催されましたね。写真を飾った通路を通りながら歌うなど無観客ならではの演出もありつつ、半崎さんらしいステージングはやっぱり感動しました。

ありがとうございます!このライブの前に、ファンクラブイベントとして一度配信ライブを演ったことがあったんですが、直接歌を届けることに意味があるからと、それまでは結構配信を遠ざけていたんです。でも改めて演ってみると、例えば病室で観てくだった方や、いつもは小さなお子さんがいてライブに来られない方など、普段届けることが出来ないところにも届けることが出来た実感がありました。実際いつもは会場に行くことが出来ない方々からライブを観ることが出来たという喜びの声もいただきましたし。なのですごくやり甲斐を感じました。


ー ましてやそれが思い出の赤坂BLITZ(現・マイナビBLITZ赤坂)ですもんね。

そうなんです!3年間お世話になったBLITZで学んだことは本当に沢山ありますし、ある意味デビューのきっかけになった場所ですからね。今、配信でしか出来ない演出とおっしゃってくださったけど、思い出の場所がライブハウスとしては終了するということで、最後にステージだけでなく客席やロビーや楽屋などを隈なく皆さんと共有出来たらという想いでああいう演出にしてみました。それにこのタイミングで最後にBLITZでライブが出来たことは意味があったと思います。本当に出来て良かった!今年は上京20周年で「布石」もリリースして、これからツアーやモールを回るはずだったものがすべて中止になって……。だからこそ余計に唯一BLITZでの配信ライブが出来たことは大きかったです。


ー 12月5日に半崎さん初のカヴァーアルバム『うた弁COVER』をリリース。今までカヴァーのイメージがなかったんですが、やはり20周年アニバーサリーイヤーだからでしょうか。

そうですね。今までコンサートや歌番組などでもカヴァーを歌うことはあまりなかったですが、やはり20年の節目なのでシンガーとして故郷や青春をテーマに作品を作りたいと思ったんです。ただ自分にとって、オリジナル曲以外で作品を作ることはすごく挑戦でした。


ー 手応えはいかがですか?

歌ってみて初めて分かることがありましたね。今回収録したどの曲も好きでよく聴いていたんですが、実際にレコーディングしてみて曲の成り立ちやメロディライン、譜割りなど気付きが沢山ありましたし、それは今後の自分の作品作りにも作用しそうだなと感じます。


ー 今作は中島みゆきさんの「ホームにて」で始まり、唱歌の「故郷」で締めくくられていますよね。やはり<故郷>を強く感じました。

中島みゆきさんの「ホームにて」は、“ふるさとへ向かう最終に”という歌詞から始まるんですが、唱歌の「故郷」の最後は、“水は清き故郷”と、<故郷>というワードで締めくくられているんです。今回は最後に1番の“忘れがたき故郷”をもう一度歌っていますが、本当に故郷で始まり故郷で終わる作品になりました。でも実は偶然もあって。


ー 偶然?

<故郷>はアルバムテーマのひとつでしたが、曲順は録音しながら変わったんです。だからこういう形でまとまったのは実は偶然で。


ー そうだったんですか!その「ホームにて」ですが、帰省と街の暮らしを歌った歌詞は、半崎さん自身も経験されていると思うんですが。

この曲はまさに自分にぴったり重なるような歌詞なので、自分自身の歌かのように感情移入してしまいますね。特に北海道を離れてから良く聴いていた曲なんです。父に反対されたまま上京したので帰りたくても帰れない時期があったし、出てきたは良いけど何者にもなれない期間が長かったので、やっぱりこの曲は自分と重なります。



ー 中島みゆきさんも半崎さんと同じ北海道のご出身ですが、今回収録された同郷、松山千春さんの「大空と大地の中で」は半崎さんの十八番だとか。半崎さんもカラオケに行くんだって、ちょっと意外でした(笑)。

そうなんです(笑)。特に高校生の頃が一番行ってたかな。ここ最近はあまり行けないですが、それでもよく行っていた頃は必ずこの曲を一番最初に歌っていました。北海道出身の方ならきっと誰しもがこの曲を知っていると思うんですが、故郷を懐かしむだけでなく、この歌を歌うと自分が真っ直ぐな、正常の位置に戻れるというか…。自分にとってそういう曲なんですよね。


ー 音源は勿論ですが、半崎さんの公式You Tubeでこの曲を歌われているのを見てもやはり十八番というだけあって、それこそオリジナルなんじゃないかと思うほど合っていました。

嬉しいです!確かにずっと聴いていたし歌っていたので、本当に自分の歌のように歌っていたかもしれません(笑)。でもあの動画も多くの方が見て、色々コメントを頂いて嬉しかったです。


ー 半崎さんの思い入れと、コメントをされているファンの方々の思い入れが繋がったように感じました。ちなみにカラオケでは他にどんな曲を歌うんですか?

高校時代やカラオケによく行っていた頃は、鬼束ちひろさんの曲を歌うことが多かったですね。


ー ああ、半崎さんの声に合いそう!

そうそう。そう言ってくださる方も多くて、よくリクエストをもらって歌ったりしていたんです(笑)。


ー ライブでも是非歌ってもらいたいです。

あー、そうですね!これを機会にちょっと歌ってみようかな。


ー 是非是非!逆に今作の中で一番大変だった歌は何ですか?

「さくらんぼの実る頃」ですかね。シャンソンなので拍もよく分からなかったし。この歌も好きで良く聴いてはいたんですが、実際にこういう形で歌ったことはなかったので、最初に演奏と一緒にレコーディングした時も難易度は高かったです。


ー そういえば先日、歌番組の収録で加藤登紀子さんとご一緒された写真をTwitterで拝見しましたが、今回カヴァーされることはお話はされましたか?

しました!CDもお渡ししたらすごく喜んでくださって、「是非色々なところで歌って下さい。」と言ってくれました。私は登紀子さんのヴァージョンが好きで聴いていたんですけど、アレンジはちょっと変えています。


ー でも歌詞は加藤登紀子さんが訳詞されたものですよね。

そうです、そうです。この曲は色々な訳詞がありますが、やはり登紀子さんの訳詞で歌わせていただきました。


ー 今、色々なアーティストの方がカヴァーアルバムを出されていますが、今作は選曲が新鮮でした。

あ、嬉しい!!