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高橋優、ニューシングル『ルポルタージュ』インタビュー

高橋優、ニューシングル『ルポルタージュ』インタビュー

November 21, 2017 19:30

高橋優

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11月1日、高橋優の取材ルームからギターを爪弾く音が聞こえた。「あ、よろしくお願いします!」午前中に別現場を終え、私服でリラックスしたムード。11月22日リリースのニューシングル『ルポルタージュ』のタイトルナンバーがテレビ朝日系 土曜ナイドラマ「オトナ高校」(毎週土曜 午後11:05~午後11:59放送)の主題歌。フランス語で「取材記者が現地に赴き取材した現地報告」という意味を持つタイトルに込めた想いや、c/wに収録した“シーユーアゲイン”と“ルポルタージュ”の共通点、MVにも出演した三浦春馬とのことなど伺ってみた。


「オトナ高校」って観られました?

ー 毎回観ています。面白いですよね。

あのドラマって基本的にはコメディじゃないですか。


ー ええ。

勿論、オトナ高校という存在自体はフィクションだけど、そこに至るまでの日本の現状のデータ…例えば30歳過ぎて独身で異性との経験がない人が現在何%というデータ。ああいうのって、今の日本と全く同じ数字を出しているんですって。


ー え、そうだったの!?

そうなんですよ!要は少子高齢化問題に独自の目線で切り込んでいっているのがあのドラマなんです。主演の三浦春馬くんとは友達だから普段から喋ったりはするけど、ドラマについても結構話したりするんです。


ー どういうことを?

あのドラマはコメディで、人に笑ってもらうためのものに見えるし、そう作っているんだけど、でも前提には結構シニカルなテーマがあるんだという話とか。あのドラマの中では結構みんな他人事みたいに笑うじゃないですか。


ー そうだね。

でも30歳、40歳過ぎて結婚する気もなくて、少子高齢化はこれからもっと問題になる。もしかしてこれから先、本当に子供がいなくなって、オリンピックに出る選手も観る人も全員40歳過ぎとか、芸能人も年配の人ばかりになるかもしれない。そういう由々しき事態を「あー、それは大変だね。」って、みんながメディアやひとつのフィルターを通して自分の問題とは思わない。あのドラマも笑っているだけで、本気で「じゃあ俺、結婚しよう!」とか「すぐ子供作ろう!」って思う人は、なかなかいないじゃないですか。


ー 優くんすれば?

それ以前に今、彼女いないから!


ー ああ、そうだったね(笑)。

だから今回「オトナ高校」の主題歌を書かせて頂くにあたっては、少子高齢化もそうだけど、ひとつの問題を提示された時に、みんなが“ネタ”として見てしまっている恐ろしい現状を自分なりに書きたいと思ったんです。


ー そのせいかドラマ本編を見ている時って、コミカルな演出やシチュエーションに笑っているんだけど、エンディングで“ルポルタージュ”が流れた途端、「あれ?これって本当は笑っているだけじゃいけないんじゃない?」って危機感を感じるというか。

それは嬉しいですね。一聴するとあのドラマでこの曲?って違和感を感じる方もいると思ったんです。でもドラマがああいうファニーな感じだからと言って、ファニーな曲という選択肢は僕の中になかったんです。


ー じゃあはじめからこういう曲調や歌詞はイメージに?

僕なりの視点で切り込みたかった部分はありました。台本を読ませて頂いた時に、そういう社会問題を面白可笑しくドラマで表現している構図が見えたので、だったら面白可笑しい部分は劇中で演じている春馬くんや他の出演者の方にお任せして、自分はもうちょっと大きな、得体の知れないものと対峙しているというか、そういう視点にどんどんシフトしていこうと思ったんです。すごく大きな流れにただ流されてしまいそうな自分というか。例えば子供出来ないし、結婚しない人増えたし、ミサイル飛んで来るし。そういうことから目をそらすように、誰かの失敗をみんなで指差して笑ってネタにしちゃえば良くない?そういう感覚に向き合うというか。


ー なるほど。深いね。「ルポルタージュ」というタイトルも、なかなか最近では耳にしない言葉だなと思って、気になったんだけど。

ドラマのことからひとつのフィルターを通して、何もかもが半笑いのネタ化してしまっているような現状。もしかしてそんなことはないのかもしれないけど、僕からはそう見えたんです。この「ルポルタージュ」という言葉は現地報告という意味じゃないですか。


ー ええ。

ノンフィクションは、それを物語にしたものだから意味合いが違うし。でもルポルタージュはそれを記事にまとめたこと。今回のこの楽曲は、自分が今見えているものを現地からそのまま報告するような曲だなと思って。でもメッセージとも少し違う気がするんです。自分の想いは勿論入っているけど、「だからどうしようぜ!」って訴えかけるよりは、提示する感じ。「今、こういうことが目に見えています。あなたはどうお思いでしょうか?」というところで留める楽曲なので、自分としては「ルポルタージュ」という言葉が一番しっくり来たんですよ。


ー サウンドがゴリゴリで、イントロのギターリフのインパクトもあって。最近のシングルでは珍しいよね。

サウンドは結果的にそうなったという感じでした。多分『明日はきっといい日になる』あたりから、ありがたいことに色々なタイアップを頂いて楽曲を書く機会が増えてきたんです。特にこの2、3年求められる楽曲は、バラードや前向きになれるメジャーコードやフォーキーな感じ。僕も勿論そういう曲調は嫌いじゃないし、むしろ高橋優を自己紹介するにあたっては、もってこいの一面だと思っているんです。ただ悪い癖のように、そうではない自分が顔を出すというか…(笑)。要はデビュー当時の自分ですよね。


ー 確かにインディーズ時代やデビュー当時の方が、尖っていたというかシニカルな作品が多いというか。

「え?この人今、歌の中でとんでもないこと言ってなかった?」って思わず聞き返されちゃうような(笑)。


ー はいはい(笑)。

多分そう言われるだろうと思っていても、そこに切り込んでいきたくなる自分がいる感覚はずっとあって。でもタイアップのお話を頂いた時は、その感覚を一旦休憩させて…休憩というか、そこは出さなくても良いなと自分でも思っていて。


ー なるほど。

ただ今回に関しては、ひとつのシニカルなテーマからコメディタッチのドラマが描かれている構図を、自分の中にある構図と合わせたいと考えたんです。それと、ドラマサイドの中でかなり中核をなすスタッフの方が、ずっと僕の楽曲を聴いてくださっていて、打合せの段階から「初期の高橋さんの感じでお願いします。ガンガンいちゃってください!」って言ってくださったので、その言葉のニュアンスをもらった時から何となくこういう感じになるのかなというイメージは浮かんでいました。