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POPSCENE

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Nozomi Nobody

12_伸び縮みする時間について

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日々がぐんぐん過ぎる。
一番好きな季節が来た。すーっと通り抜けてく匂いのない風とか、連なる薄い雲とぐーっと遠くに伸びていく空とか、「あぁ秋だ」と思うと嬉しい(この間無性に秋刀魚が食べたくなってスーパーに走った、とても美味しかった)、だけど何となく喜び切れないのはリリースがどんどん過去のことになっていくことへの淋しさからか、どうかな
 
ツアーがはじまった。いつもお世話になってる熊谷モルタル、1年と少しぶりの酒田、そして今年3月に初めてお邪魔した上越にもまた行けた。どこもぜんぶ、心から楽しみにしていた土地。
また会いに行けること、奇跡みたいだなと思う。大げさじゃなく、そう思う。
 
熊谷から酒田までは新潟を経由して行った。新幹線で新潟まで出て、そこからは特急の電車で日本海沿いをずーっと北上した。天気が悪くて途中嵐のような空模様になって、荒れ狂う日本海(演歌みたいな)をぼんやり眺めながら電車に揺られて過ごした。
ツアーの移動は大抵いつもひとりだから、あれもこれもと思ってパソコンや本やノートや、持って行ってみるのだけど、結局いつも音楽を聴きながら窓の外を見ていたら目的地に着いてしまう。
だんだんと景色が変わっていくのを見ているのが好きだ。畑とか山とか、河原の屋根とか、田舎の安っぽいホテルのネオンとか。あとすごく好きなのは河を超えていくとき。何ていうか明確に違う土地にわたっていっているのだということを実感する。
今回の酒田はちょうど稲刈りの時期で、黄金色の田畑とそれから山と空と、とてもとても綺麗だった。
 
連載をちっとも更新しないまま日々が過ぎてしまって、いつだって何度も何度も書こうとして書きかけてだけど書き終えることが出来ないまま今日になってしまった。理由はわからない。
他にもアルバムにまつわるものとか、色々、書きたいなと思っているものがあるのだけど、何となくずっとうまく書けないでいる。宿題がたまっていく。
 
いつか形になればいい、とも思う、だけど今形にしておかないと忘れていってしまうことって沢山ある。びっくりするくらい、沢山。というか覚えていられることの方が少ないように思う。
忘れていくし、過ぎていく。良いとか悪いとか関係なく、そういう風になってる。
 
今日、久しぶりに大好きな佐野洋子さん(『100万回生きた猫』の作者)のエッセイ集『私の猫たち許してほしい』を何となくぱらぱらとめくっていたら、その中の「時は過ぎゆく」というセクションの中の一節が心に留まった。
 
『人は時計を持って時をはかっても、それぞれの人にとって一秒は同じ一秒ではない。
 同じ地球に生きていても、地球の動く速さはちがっていて、それぞれの地球の回り方をしている。』
 
最近は時間に振り回されてばかりいたから、何だか目が覚めたような思いがした。
時は伸びたり縮んだりする。それは体や心と同んなじだ。今日の24時間と明日の24時間は同じ長さではない。一番好きな人と一緒にいる1時間とひとりで部屋でぼーっと過ごす1時間は同じ長さではない。あなたの24時間と私の24時間は同じ長さではない。どうして同じ物差しではかることが出来るだろう。
というようなことが書いてある(佐野さんは生前時計を持っていなかったらしい)。
 
あと数日もすれば私はまたひとつ歳をとるわけだけれど(!)、生まれてからの最初の1年と去年から今年までの1年はやっぱりどうしたって同じ1年ではなく、歳をとればとるほど時間が経つのが早くなると先輩たちは口を揃えて言うし、私も最近はそれを何となく感じるようになってきた、そんなことを考え始めたら1秒も1分も1時間も1年も、何だかよくわからなくて頭の中では時計の文字盤がぐにゃーっと歪んでいくイメージ、だけど時計の針の音だけがカチカチカチカチと同じ1秒を刻み続けているのであって、抗うことの出来ないあらゆることの象徴のように思えて何となくしょんぼりした気持ちになってくる。
 
せめて同じ1秒を刻み続ける時計と、もうひとつ、伸び縮みする1秒、つまり体感の1秒を刻んでくれる時計があったらいいのに、
だけどそうしてそんなことを考えながらこうして文章を書いたり消したり書いたりしているうちにもすっぽりと夜に包まれた夜という名前の時間がやってきていて、なるほど果たして時間は容赦なく過ぎていることを認めないわけにはいかないね、
最近はいろんなこと、あまり焦ったり急かしたりしないでなるべく穏やかに大らかにいるようにしているけど、だけど時間はやっぱりどうしたって過ぎていくから、あぁ生きなくちゃ、と思う。
 
これから続いていくツアーにまつわる全てが、矢のように過ぎるほど楽しく充実したものであればいいなと思う、だけどその中にいたらぎゅっと縮んで濃くなったその愛おしい瞬間をどうにか引き伸ばせたらいいのにと、きっと思うんだろう。それは疑いようもなく幸せなことだと思うけれど。
願わくばそういう日々がずっとずっと続くように、頑張って生きよう。

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  PROFILE

Nozomi Nobody

singer song writer based in Tokyo, Japan
vocal / guitar / loop station
2016.6.15 mini album "We Are Always a Bit Lonely" Release